駐車場利用権

当マンションで問題になっております分譲型の駐車場専用使用権の取り扱いについてアドバイスを願います。専用使用権所有者が再建時に、使用権を自主的に管理組合に返上することでまとめようと考えております。これらに関しまして文章の内容を含めて、ご指示・ご教授できます点がございましたならばお教え願います。

以下では、第一に、①駐車場の所在場所の権利関係、②貴マンションの管理組合、③駐車場専用使用権に関する管理規約についてどのような前提を置いて、この回答をするかを説明します。第二に、駐車場専用使用権の根拠である管理規約の変更手続に関する区分所有法の規定を説明します。その上で、第三に、これらを前提とした場合に、ご質問の2種類の文書について、どのような問題が考えられるかを検討します。

1 本回答の前提
(1)貴マンションの敷地利用権
貴マンションの敷地が、区分所有者全員の共有であることを前提とします。

(2)駐車場の所在場所
ご質問によると、屋内駐車場と屋外駐車場とがあるようです。ここでは、屋内駐車場は貴マンションの共用部分の一部に、屋外駐車場はその敷地の一部に設置されていることを前提とします。

共用部分は、原則として、区分所有者全員の共有ですから(区分所有法11条1項本文)、屋内駐車場が所在している共用部分も区分所有者全員の共有であることを前提とします。また、(1)で、貴マンションの敷地は区分所有者全員の共有であることを前提としましたから、屋外駐車場が所在する敷地も区分所有者全員の共有であることを前提とすることになります。

(3)管理組合
貴マンションの管理組合が単棟型の管理組合--すなわち、1棟のマンションの区分所有者全員を組合員とする管理組合--であり、団地型の管理組合ではないことを前提とします。

(4)駐車場専用使用権に関する管理規約の規定
共用部分が共有者全員の共有に属する場合には、各共有者は、その用法に従って共用部分を使用することができるのが原則です(区分所有法13条)。また、一般に、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができるのが原則ですから(民法249条)、敷地が区分所有者全員の共有の場合には、敷地は区分所有者全員がその持分に応じて使用できるのが原則です。

しかし、区分所有法30条1項は、この原則に対する例外として、「建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律で定めるもののほか、規約で定めることができる」と規定しています。したがって、共用部分の内の特定の部分や敷地の内の特定の区域を駐車場として区分所有者に使用させる旨管理規約に定められている場合において、駐車場の特定区画を特定の区分所有者に使用させる旨の契約を管理組合が締結した場合には、その者だけがその区画を駐車場として使用できることになります。管理規約およびこれに基づく駐車場使用契約に基づいて、特定の区分所有者が駐車場の1区画を駐車場として専用使用する権利が駐車場専用使用権です。

ご質問では、「管理組合が駐車場に関して徴収できる費用は管理費のみとする」という趣旨の規定が管理規約に含まれている、とのことですから、貴マンションの管理規約も駐車場専用使用権について規定しているものと思われます。しかし、その詳細はご質問からはわかりませんので、ここでは、使用料以外の点では、駐車場専用使用権について、貴マンションでも、「マンション標準管理規約(単棟型)」の規定と類似した規定が置かれていることを前提とすることにします。ただし、この標準管理規約は、2005年に、国土交通省が住宅宅地審議会の答申に基づいて作成したものです。貴マンションの管理規約は1971年頃に作成されているものと思われますから、駐車場使用権に関する管理規約の規定がこれと違っていても、何ら不思議はありません。

マンション標準管理規約(単棟型)第15条(駐車場の使用)
第1項 管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。
第2項 前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。
第3項 区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。

なお、本条に対するコメントには、駐車場使用契約書のひな型も掲載されています。

2 管理規約の変更
管理規約は、「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議」で変更することができるのが原則です(区分所有法31条1項本文)。各区分所有者が有する議決権の量は、原則として、各区分所有者の共有部分の持分割合により決まり、共有部分の持分割合は、原則として、各区分所有者が有している専有部分の床面積の割合で決まります(区分所有法38条、14条1項)。ただし、共有部分の持分割合とは異なる仕方で議決権割合を定める旨管理規約で規定することもできますし(区分所有法38条)、専有部分の床面積割合とは異なる仕方で共有部分の持分割合を定める旨管理規約で規定することもできます(区分所有法14条4項)。これらの場合には、規約で定めたところにしたがって、議決権の量を算定することになります。

もっとも、「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議」があれば、どんな規約でも認められるわけではありません。規約は、「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは付属施設(建物の敷地又は付属施設に関する権利を含む)につき、それらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければな」りませんし(区分所有法30条3項)、また、規約の設定、変更または廃止が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければな」りません(区分所有法31条1項)。これらは、いうまでもなく、少数の区分所有者を保護することを目的としています。

3 検討
現在貴マンションで検討していられる文書は、①管理組合と各駐車場専用使用権者との間の合意という形式の文書と、②各駐車場専用使用権者から管理組合への差し入れという形式の文書の2種類です。以下では、まず、①の形式の文書について検討します。

(1)管理組合と各駐車場専用使用権者との間の合意という形式の文書
この文書では、駐車場専用使用権者は、①建替え決議が成立した場合には、駐車場専用使用権を無条件で速やかに管理組合に返上すること、および②建替え決議に代わり、修繕等によるマンション使用延長が総会で議決された場合には、特定の期日(具体的な日にちを記載することが予定されています)までに駐車場使用権を管理組合に返上することを約し、それに対し、管理組合は、この文書に署名した駐車場専用使用権者の駐車場使用に関して今後も現規約を遵守することを約しています。

イ 建替え決議が成立した場合に駐車場専用使用権を返上する旨の約束(第2条)
建替え決議が成立しても、その実現過程には紆余曲折があることが少なくないのですが、第2条がこれを考慮しているかが気になります。

建替え決議を実現する方法は、主として、円滑化法の手続きによるか、等価交換方式によるかです(これらの方法については、NO27に対する回答を参照して下さい)。この何れかの方法で建替え決議を実現する場合に、管理組合(区分所有法では「区分所有者の団体」(区分所有法3条)と呼んでいます。)がどの段階で消滅するのかは、必ずしも明確ではありません。しかし、少なくとも、そのマンションの区分所有権がすべて、建替えを行う事業主体(マンション建替組合若しくは建替えの事業主体に選定されたデベロッパー)に移転すれば、これは消滅するものと考えられます。管理組合が消滅すれば、管理規約も効力を失います。この時期は、具体的には、円滑化法を使う場合には権利変換期日、等価交換方式による場合には、デベロッパーが区分所有者全員から区分所有権の移転登記を受けた段階であると考えられます。

建替え決議がスムーズに実現される場合には、建替え決議成立から1~2年程で、区分所有権はすべて、マンション建替えの事業主体に移転し、管理組合は消滅することになるでしょう。第2条では、駐車場専用使用権者は建替え決議後を「無条件で速やかに」駐車場専用使用権を返還することを約束していますが、この場合には、この約束の履行について、管理組合と駐車場専用使用権者との間で大きなトラブルは生じないでしょう。

しかし、建替え決議は、常に、スムーズに実現されるわけではありません。大阪千里桜ヶ丘マンションの事例では、建替え決議成立から再建マンションの完成まで10年近くかかっていますから、区分所有者全員がその区分所有権を建替え事業者に移転するまで7~8年かかっており、その間管理組合が存続していたものと思われます。また、麻布パインクレストの事例では、第1回建替え決議の成立から管理組合の清算まで7年間かかっています。また、建替え決議は成立したが、一向に実現に至らないというマンションもあるようです。

このように建替え決議の成立から建替え事業主体への全区分所有権の移転完了まで、言い換えれば、管理組合が消滅し、管理規約が効力を失うまで時間がかかることがあります。そのような事態が貴マンションで生じた場合には、駐車場専用使用権を「速やかに無条件で返上する」という約束が却ってトラブルを生じさせるおそれがあるのではないでしょうか。

なお、これは単なる不注意によるミスだと思いますが、「建替え決議」の法的根拠として、円滑化法が引用されています。つまらない争いの種にならないように、これも「区分所有法」(昭和37年法律第69号)に訂正しておかれた方がよいと思います。

ロ 建替え決議に代わり修繕を行う旨の議決が成立した場合は、一定の期日までに駐車場専用使用権を返上する旨の約束(第3条)
この約束についても、気になるところが幾つかあります。

第一に、「組合総会でマンションの建て替え決議に代えて修繕等による当該マンションの延長使用方法が議決された場合」とありますが、貴マンションの建物や設備修繕について総会で議決することは、しばしば、生じるのではないでしょうか。

マンションが老化して行くにつれ、雨漏り、ガス漏れ、水道管の腐食、外壁の落下などが生じ、しばしば、建物を補修しなければならなくなります。管理組合がこれらの補修を行う場合には、通常、総会の議決が必要になるものと思われます。その理由は、次のとおりです。

建物区分所有法17条1項は、共用部分の著しい変更には集会の特別決議(ただし、規約により、区分所有者の定数を過半数まで減じることができます。)が必要である旨規定しています。また、同法18条1項は、著しい変更とはならない共用部分の変更についても、保存行為以外は、集会の普通決議が必要である旨規定しています(ただし、規約で別段の定めをすることができます)。貴マンションの管理規約が、このような区分所有法の規定と異なる規定を設けているか否かは判りませんが、マンション標準管理規約(単棟型)は、「第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し」は総会議決事項である旨定めています(同規約48条6号)。そして、規約28条1項は、「特別の管理」として「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」(1号)や「敷地及び共用部分等の変更」(3号)を挙げていますから、これらを行う場合には、管理組合総会の議決が必要となります。貴マンションの管理規約が、修繕についてどの範囲まで総会事項としているかはわかりませんが、建物の老化に伴う多くの補修は、総会の議決事項に含まれる可能性が高いのではないでしょうか。

そうすると、修繕に関する組合総会での議決のうちで、どれが「組合総会でマンションの建て替え決議に代えて修繕等による当該マンションの延長使用方法が議決された場合」に該当するかを決定するときに、争いが生じることはないのでしょうか。それとも、この第3条は建替えに代える修繕である旨議案で特に明示して総会の議決を行った場合にのみ、一定の期日に駐車場専用使用権を返上するという趣旨なのでしょうか。

第二に、第2条では、建替え決議が成立した場合には駐車場専用使用権を「無条件で」返上する旨規定されていますが、第3条には、「無条件で」という文言が入っていません。これは返上する際の争いの種になるのではないでしょうか。

第三に、第3条は、「建替え決議に代わる修繕の議決がなされた」場合には、特定の年月日に専用使用権を返上する旨規定しています。しかし、その特定の年月日以後にその議決がなされた場合はどうなのでしょうか。この条文だと、その場合には、駐車場専用使用権者は、専用使用権を返上する必要はなく、何時までも使用を継続できることになるように思われますが、それで良いのでしょうか。

ハ 駐車場使用に関して今後も現規約を遵守する旨の約束(第1条)
第1条によると、管理組合は、駐車場使用権者に対して、「駐車場の使用に関して今後も現規約を遵守する」と約束しています。この約束で念頭にあるのは、具体的には、「管理組合が駐車場に関して徴収できる費用は管理費のみとする」という現規約の規定を管理組合は変更しないということのようです。しかし、文言上は、これは、駐車場使用に関しては、専用使用権者の承諾なしには、現規約を専用使用権者に不利益に変更することはしない、と管理組合が約束していることになると考えられます。

管理組合のこの約束について、第一に問題となるのは、その有効性です。2で説明しましたように、区分所有法31条1項本文は、「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議」により管理規約を変更することを認め、それに対する制約として、但書で、「規約の・・・変更・・・が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定めています。

この「特別の影響を及ぼすべきとき」の解釈については、次の最高裁判例があります。それは、駐車場専用使用料を増額する管理組合集会決議に対して、駐車場専用使用権を有する区分所有者が、増額には自分たちの同意がないから決議は無効だ、と主張した事案です。最高裁は、管理規約の定めに基づいて、管理費等に関する細則の規定を集会決議により改訂し、使用料を増額する場合には、集会決議についても区分所有法31条1項但書が類推適用される、と判示した上で、「特別の影響を及ぼすべきとき」とは「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超える場合をいう・・・」と一般論を述べ、それに基づいて、その事案では増額決議は有効であると判示しています(最判平成10年10月30日民集52巻7号1604頁)。 したがって、区分所有法の規定では、駐車場使用料を増額する集会決議や管理規約変更を行う場合に、常に、駐車場使用権者各自の承諾が必要なのではなく、これが必要となる場合と必要ではない場合があることになります。

ところが、管理組合が第1条のような約束をすると、管理組合は、駐車場専用使用権者の承諾がない限りに駐車場専用使用権者に不利益な規約の変更を一切しないことを約束したことになります。そのような約束が有効なのかについては疑問が残るところです。

また、これは、実質的には一種の規約変更ではないか、とも考えられますので、その議決の仕方が、集会における普通決議でよいのか、規約の変更と同様、四分の3以上の特別決議による必要はないのか、という問題もあります。

(2)管理組合と各駐車場専用使用権者の駐車場専用使用権の返上を停止条件に係らせるという形式の文書
この文書では、駐車場専用使用権者は、①駐車場の使用に関しては今後も現管理規約が遵守されること、すなわち、駐車場の使用に関しては駐車場専用使用権者の承諾なしに使用権者にとり不利益な管理規約変更が行われないことを条件として、②ⅰ 建替え決議が成立した場合には、無条件で速やかに、ⅱ 建替え決議に代えて修繕等による本マンションの延長使用方法が議決された場合には、一定の期日までに、③駐車場専用使用権を管理組合に返上することを、管理組合に約束しています。

この文書の②ⅰ、および②ⅱの文言に関する問題点は、(1)の文書の第2条、第3条についてイ、ロで挙げた問題点と同じです。

それに対し、この文書では、現管理規約の遵守は、各駐車場専用使用権者に対して管理組合が負う義務ではありませんので、(1)の文書の第1条についてハで挙げた問題点は(2)の文書では解消されています。その代わり、(2)の文書の差し入れを駐車場専用使用権者から受けた管理組合は、駐車場の使用に関する現管理規約の規定を、駐車場専用使用権者に不利益に変更しても--たとえば、駐車場専用使用権者は管理費のほかに駐車場使用細則に基づいて一定額の駐車場専用使用料を支払う旨管理規約を変更し、使用細則で使用料の金額を定めても--、法律上は、駐車場専用使用権者に対して、債務不履行の責任を負うものではありません。

もちろん、これにより、この文書の①の条件が成就しないことが確定するわけですから、駐車場専用使用権者は、たとえ、その後に建替え決議が成立しても、すみやかに無条件で駐車場専用使用権を返上する必要はありません。しかし、(1)の文書についてイで述べたように、建替え決議が実施されれば、遅くとも、区分所有権がすべて建替え事業主体(マンション建替組合またはデベロッパー)に移転した段階で管理規約は消滅します。マンション標準管理規約(単棟型)15条3項によると、駐車場専用使用権者が区分所有権を他に譲渡した場合には駐車場使用契約は消滅する旨規定されていますから、その場合には、たとえ、駐車場使用契約の契約期間がまだ残っていても、この契約は終了し、区分所有者の駐車場専用使用権も消滅するものと考えられます。また、貴マンションの管理規約がこのような規定を設けていない場合でも、駐車場専用使用権は区分所有権に付随する権利ですから、区分所有権自身がすべて建替え事業主体に移転した場合には、これは消滅するものと考えられます。

また、管理組合が現管理規約の遵守という条件に違反した場合には、建替え決議に代えて修繕等による本マンションの延長使用方法が議決されても、駐車場専用使用権者は、この文書に定められた期日に専用使用権を返上する必要はありません。しかし、管理組合が、駐車場の使用に関する管理組合の規約を、区分所有法31条1項但書に抵触しない範囲で、駐車場専用使用権者に不利益に変更する--たとえば、合理的な範囲で駐車場使用料を増額する--ことは考えられます。

4 結論
以上の検討によりますと、管理組合と駐車場専用使用権者と合意という形式の文書よりは、駐車場専用使用権者が管理組合に差し入れる形式の文書の方が、管理組合にとっては難点がすくないように思います。しかし、その場合でも、合意形式の文書の第2条、第3条について述べましたように、この差し入れ形式の文書の1条、2条の内容や文言について、さらに検討することが必要であるように思います。