建替えの事業方式

マンション建替えを実現するためには、どのような方法があるのでしょうか? 事業方式を教えてください。

マンション建替えを実現する事業方式としては、大きくは次の3つの事業パターンに分類することができます。
A 全員合意型
B 市街地再開発事業型
C 建替え決議型

また、Aの全員合意型は、事業手法の違いにより、次の2つの事業パターンに分類することができます。
A-① 全員合意+任意事業型(等価交換方式)
A-② 全員合意+円滑化法個人施行型

さらに、Cの建替え決議型は、事業手法等の違いによりさらに次の3つの事業パターンに分類することができます。
C-① 建替え決議+円滑化法組合施行型
C-② 建替え決議+円滑化法個人施行型
C-③ 建替え決議+任意事業型

以下、それぞれのプロセスの概要と特徴を見てみましょう。

A 全員合意型
A-① 全員合意+任意事業型
【事業プロセスの概要】
①区分所有者間で建替えの機運が生じる
②区分所有者からの働きかけ、もしくは、デベロッパーからの働きかけにより、事業協力者としてのデベロッパーが選定される
③デベロッパーの提案内容での建替えに、区分所有者全員が賛成し、全員合意の状況となる
④デベロッパーと各区分所有者が等価交換契約を締結する。抵当権者についてはその前に抵当権の抹消または付け替えの同意を得る
⑤借地権者の立退き(もしくは再建マンションへの入居を前提とした一時退去)、区分所有者の退去後、デベロッパーは既存建物を解体撤去し、再建マンションを新築する
⑥再建マンションの完成後、各区分所有者は、それぞれの等価交換契約に基づき、新マンションの部屋を取得し、契約に基づく差金の清算を行い、入居を開始する

【特徴】
区分所有法の特別多数決議である建替え決議によらずに、民法の原則に基づく全員合意により、建替えを行う方式です。この場合、建替えに要する費用を区分所有者全員で出し合う自主建替えの方法も理論的にはあり得ますが、建替えに要する費用をデベロッパーが負担する等価交換方式を採用することが大半です。この場合、デベロッパーは再建マンションにおいて取得した床(区分所有者以外の者が取得する床を「保留床」といいます)を新規購入者に分譲して建替え費用を回収し利益を得ます。区分所有者の立場から見れば、土地代から既存建物の取壊し費用を差し引いた金額に見合う再建建物の床(区分所有者が取得する床を「権利床」といいます)を取得することになるわけです。この等価交換方式の場合、デベロッパーが建替え事業全般について事業リスクを負担するので、デベロッパーが信頼できる企業である限り、区分所有者の抱える事業リスクは少なくてすむメリットがあります。円滑化法施行前のマンション建替えの大半が、この全員合意任意事業型でしたが、それは、容積率に余裕があり、還元率が1.0を超えるなど、建替え条件に恵まれていたことによるものであり、円滑化施行以降の事例は知られていません。

A-② 全員合意+円滑化法個人施行型
【事業プロセスの概要】
①区分所有者間で建替えの機運が生じる
②区分所有者の間で建替えについて全員合意の状況となる
③個人施行者を選定し、個人施行者が事業計画を作成し、都道府県知事の認可を受ける
④個人施行者がマンション区分所有者、借家人、抵当権者等の従前の権利を、施行再建マンションの区分所有権または敷地利用権にかかわる権利に権利変換する権利変換計画を作成し、都道府県知事の認可を受ける。
⑤権利変換期日に権利変換を行う
⑥既存建物を取り壊し、施行再建マンションを建設する
⑦建物(施行再建マンション)の完成後、権利者が入居し、事業費の清算後、事業終了認可を受ける

【特徴】
これも、区分所有法の特別多数決議である建替え決議によらずに、民法の原則に基づく全員合意により、建替えを行う方式ですが、円滑化法の個人施工方式を用いることに特徴があります。この事業パターンにおいては、区分所有者の誰かが個人施行者になることは可能ですが、実際には事業リスクを負担し得るデベロッパーが個人施行者になることが想定されます。この場合、A-①と同様に、区分所有者間の合意形成過程でデベロッパーが登場し、その提示条件で区分所有者間の全員合意が成立する必要があると考えられます。デベロッパーが個人施行者になる場合には、個人施行者であるデベロッパーが事業リスクを負うことになるので、区分所有者の抱える事業リスクは相対的に少なくてすみます。事例としては、桜新町グリーンハイツなどがこの事業パターンを採用しています。

B 市街地再開発事業型
【事業プロセスの概要】
①既存マンションを含む一定の区域で、再開発の機運が生じる
②市街地再開発事業の実施を前提として、都市計画が変更される
③マンション区分所有者を含む区域内の権利者の再開発に向けての合意が形成され、事業計画・定款を作成し、再開発組合の認可を受ける。
④マンション区分所有者を含む権利者および借家人、抵当権者等の従前の権利を、再開発後の施設建築敷地および施設建築物にかかわる権利に権利変換する権利変換計画を作成し、都道府県知事の認可を受ける
⑤権利変換期日において権利変換を行う
⑥既存建物を取り壊し、施設建築物を建設する
⑦建物(施設建築物)の完成後、権利者が入居し、事業費の清算後、事業終了認可を受ける

【特徴】
市街地再開発事業の一環として、マンションの建替えを実現する方法です。合意形成の範囲が、そのマンション内の区分所有者だけでなく、再開発事業の区域内の権利者に広がるため、合意形成の手法自体、一般のマンション建替えとは相当に異なります。権利者数の増加や権利者の多様化、再開発組合認可や都市計画決定等の行政手続など、一般のマンション建替え以上に煩雑な手続きを要する反面、都市計画事業としてのある種の強制力や事業費に対する補助が期待できる利点もあります。円滑化施行前に数例の実例があります。

C 建替え決議型
C-① 建替え決議+円滑化法組合施行型
【事業プロセスの概要】
①区分所有者間で建替えの機運が生じる
②区分所有者で合意が形成され、集会で区分所有法の建替え決議が議決される
③建替え決議賛成者が、事業計画・定款を作成し、都道府県知事の認可を受け、マンション建替組合を設立する
④非賛成者がいる場合、建替組合が売渡請求により建替え不参加者から権利を買い取る
⑤建替組合がマンション区分所有者、借家人、抵当権者等の従前の権利を、施行再建マンションの区分所有権または敷地利用権にかかわる権利に権利変換する権利変換計画を作成し、都道府県知事の認可を受ける。なお、権利変換計画不同意者の権利は組合が買い取る
⑥権利変換期日に権利変換を行う
⑦既存建物を取り壊し、施行再建マンションを建設する
⑧建物(施行再建マンション)の完成後、権利者が入居し、事業費の清算後、事業終了認可を受ける

【特徴】
組合施行の円滑化法を利用する際の事業手法であり、円滑化法施行以降は、このパターンを採用するケースが最も多くなっています。この事業パターンにおいても、権利変換の結果として生まれる保留床をあらかじめデベロッパーが取得することを約束していることが一般的です。このような保留床取得者を参加組合員といいますが、デベロッパーが、どこまで事業全体の遂行に責任を持つかで、建替え決議+円滑化法組合施行型の事業リスクが変わってきます。
なお、デベロッパーが参画しない自主建替え方式の場合も、この事業パターンを採用することになるものと考えられます。

C-② 建替え決議+円滑化法個人施行型
【事業プロセスの概要】
①区分所有者間で建替えの機運が生じる
②区分所有者で合意が形成され、集会で区分所有法の建替え決議が議決される
③区分所有者の全員が、個人施行者の作成する事業計画に同意し、都道府県知事の認可を受ける
④個人施行者がマンション区分所有者、借家人、抵当権者等の従前の権利を、施行再建マンションの区分所有権または敷地利用権にかかわる権利に権利変換する権利変換計画を作成し、都道府県知事の認可を受ける。
⑤権利変換期日に権利変換を行う
⑥既存建物を取り壊し、施行再建マンションを建設する
⑦建物(施行再建マンション)の完成後、権利者が入居し、事業費の清算後、事業終了認可を受ける

【特徴】
建替え決議後に、組合施行の円滑化法を利用する際の事業手法ですが、建替え決議の結果、全員合意の状況をつくり出し、個人施行者の作成する事業計画に区分所有者全員が同意する必要があります。実際には建替え決議前に、デベロッパーが個人施行者として合意を取得する必要があるので、建替え決議前に全員合意の状況をつくり出すことができれば、建替え決議の必要はなく、この場合には、A-②の事業パターンとなります。理論的には、建替え決議の結果として円滑化法の個人施行を選択することはあり得ますが、実例はまだ知られていません。

C-③ 建替え決議+任意事業型
【事業プロセスの概要】
①区分所有者間で建替えの機運が生じる
②区分所有者で合意が形成され、集会で区分所有法の建替え決議が議決される
③非賛成者が生じた場合は、その権利を賛成者もしくは買受指定者(この場合はデベロッパー)が売渡請求により買い取る。
④デベロッパーと各区分所有者が等価交換契約を締結する。抵当権者についてはその前に抵当権の抹消または付け替えの同意を得る
⑤借地権者の立退き(もしくは再建マンションへの入居を前提とした一時退去)、区分所有者の退去後、デベロッパーは既存建物を解体撤去し、再建マンションを新築する
⑥再建マンションの完成後、各区分所有者は、それぞれの等価交換契約に基づき、新マンションの部屋を取得し、契約に基づく差金の清算を行い、入居を開始する

【特徴】
建替え決議後に、円滑化法を用いずに、デベロッパーとの等価交換方式によりマンション建替えを進める事業手法です。円滑化法の施行前に、全員合意を得られず、建替え決議を経た場合には、この事業手法しかありませんでした。建替え決議の有効性を巡って最高裁まで争われた新千里桜ヶ丘住宅や、麻布パインクレスト、同潤会江戸川アパートメントは、円滑化施行前に建替え決議がなされた事例でしたので、この事業パターンを採用しています。また、円滑化法施行以降であっても、ジードルンク府中などでは、区分所有者数がそれほど多くなく、円滑化法よりも手間隙が掛からず事業期間を短縮できるとの判断で、この事業パターンを採用しています。また、円滑化法よりも、デベロッパーの責任が明確であるというメリットもあります。こうしたことから、円滑化法施行以降も、この事業パターンを選択する余地は十分にあるものと考えられ、関西地区を中心に実例も多くあります。

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