専用庭使用に関して使用料を規定している規約の可否

ベランダ及び専用庭は共に共用部であり、専用使用が認められています。両者は設置状況に相違があるものの、他は同様と考えられます。しかし、専用庭については使用料を支払う義務があります。このような規約は有効なのでしょうか?

1 はじめに
ご質問は、貴マンションの規約(管理規約の場合と団地の管理規約の場合とが考えられます)には、ベランダの専用使用権は無償、「専用庭」の専用使用権は有償という規定があるが、これは有効か、というものです。その規定が有効か否かを検討するには、第一に、その規定を含んでいる規約の設定は区分所有法の定める手続にしたがって行われているか、また、ベランダ無償、「専用庭」有償という規定が規約変更により挿入されたものである場合には、その規約の変更が区分所有法の定める手続にしたがって行われているか、を検討することが必要です。第二に、規約の設定、変更が区分所有法の手続にしたがって行われている場合でも、規約で定めることができるものとして区分所有法が定めている事項に、ベランダや「専用庭」の専用使用権に関する規定は含まれるのかを検討することが必要です。さらに、第三に、これが規約で定めることができる事項に含まれるとしても、ベランダ無償、「専用庭」有償と定めることは、区分所有者間の衡平を害する規定を禁止している区分所有法の条文に反するものではないのかを検討することが必要です。

これらの内、第一の問題は、本Q&Aにおける他の回答に譲り、ここでは、簡単に触れるに止め、第二、第三の問題について検討します。

なお、「規約」には、通常「管理規約」と呼ばれている規約と通常「団地の管理規約」と呼ばれている規約とがあります。区分所有法3条に基づいて成立する「区分所有者の団体」(通常、「管理組合」と呼ばれています)が設定する規約が前者であり、区分所有法65条に基づいて成立する「団地建物所有者の団体」(通常、「団地の管理組合」と呼ばれています)が設定する規約が後者です。

ところで、区分所有法は、第一章「建物の区分所有」と第二章「団地」との分かれており、第二章の規定は第一章に規定の特則です。「管理規約」に適用されるのは第一章の規定であり、「団地の管理規約」に適用されるのは第二章の規定です。

したがって、ベランダ無償、「専用庭」有償という貴マンションの規約が区分所有法上有効か否かを検討する場合でも、貴マンションの規約が「管理規約」か「団地の管理規約」かにより、適用される区分所有法の規定も違ってきます。それ故、第二、第三の問題について検討する前に、どのような場合に第一章の規定が適用され、どのような場合に第二章の規定が適用されるのかを説明します。
 
2 区分所有法の適用対象に関する原則と例外--一棟の建物と団地
(1) 区分所有法の適用対象に関する原則--一棟の建物
区分所有法第一章は、「一棟の建物」という観念から出発しています。すなわち、同法は、一棟の建物について、その部分が一定の要件を満たしている場合に、そのような部分(マンションの各住戸がこれに当たります)を所有権の目的とすることができる旨定め(1条)--一棟の建物のそのような部分を目的とする所有権が「区分所有権」です(2条1項)--、この区分所有権の目的となっている部分(これが「専有部分」です(2条3項))を有する建物(専有部分のある建物)について、その建物(特に、その共用部分)、敷地、付属施設を区分所有者が管理する仕組や管理の仕方を定めています。

(2) 区分所有法の適用対象に関する例外--団地
これに対し、区分所有法第二章は、①1団地内に数棟の建物(専有部分のある建物に限りません。)があり、②その団地内の土地又は付属施設(それらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあっては区分所有者)の共有に属する場合に、これらの建物の所有者(団地建物所有者)が、全員で、その団地内の土地、付属施設、及び専有部分のある建物を管理する場合について、第一章の特則を定めています(65条)。

たとえば、下の第1図、第2図を見て下さい。

団地甲には、A、B、Cの3つの分譲マンション(専有部分のある建物)が、団地乙には、D、E、Fの3つの分譲マンションが建っています。いずれの場合にも、「1団地内に数棟の建物」がありますから、上記①の要件は満たされています。団地甲では、団地内の土地は、ABCマンションの区分所有者の共有です。したがって、②の要件も満たされます。他方、団地乙では、Dマンションの敷地はDの区分所有者だけの共有であり、E、Fの敷地も、それぞれのマンションの区分所有者の共有です。したがって、「その団地内の土地」が団地内の建物の所有者の共有」であることという要件は満たしていません。しかし、団地乙では、団地内にgとい付属施設(たとえば、倉庫)があり、これはDEFの3つのマンションの区分所有者の共有です。したがって、「付属施設がそれらの建物の所有者の共有に属する場合」にあたり、やはり②の要件は満たされます。

貴マンションの場合も、①それが団地内にあり、かつ、②貴マンションの区分所有者と団地内の他の建物(分譲マンションでなくてもよい)の所有者(区分所有者を含む)が、団地内の土地(一部でもよい)または付属施設(1つでもよい)を共有して場合には、上記の要件が満たされますから、区分所有法第二章の規定が適用され、同法65条に基づいて、それらの建物の所有者(区分所有者を含む)を構成員とする団地建物所有者の団体(団地の管理組合)が成立します。

ただし、団地の管理組合が成立した場合に、その組合が管理する建物、土地、付属施設の範囲については、後に4(3)ロで説明します。

3 管理規約が定めることができる事項の範囲
(1)区分所有法30条1項
2(1)で述べましたように、管理規約については、区分所有法第1章の規定が適用されます。管理組合が、どのような事項について、管理規約で定めることができるかを定めているのは、区分所有法30条1項です。

区分所有法30条1項:建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律で定めるもののほか、規約で定めることができる。

したがって、「専用庭」と呼ばれている場所が、①建物(ご質問の事例では、貴マンション)の共用部分の一部か、②その建物の敷地の一部である場合には、貴マンションの管理規約で、その場所の管理、使用について定めることができます。

(2)「専用庭」は貴マンションの共用部分または敷地の一部か
ご質問が「専用庭」を「ベランダ」と対比していられるところから推測しますと、これは貴マンションの「共用部分」であるとも考えられます。

しかし、1階の住戸が「専用庭」を有している場合には、その場所は「土地の一部」であることも考えられます。土地の一部の場合には、その土地が、区分所有法上の「敷地」(区分所有法2条5項)である場合にのみ、その使用について管理規約で定めることができます。敷地には、①「建物が所在する土地」(2条5項)と②「建物が所在する土地と一体として管理又は使用する庭、通路その他の土地」で「規約により建物の敷地」とされている土地とが含まれます。前者が法定敷地、後者が規約敷地です。「建物が所在する土地」とはマンションの物理的な底地を指しますが、この場合の土地とは1筆単位で把握すると解されています(法務省民事局参事官室編、「新しいマンション法」、1983、商事法務研究会、119頁)。したがって、ご質問の「専用庭」が土地の一部である場合には、それは法定敷地の一部である可能性が高いと思われます。

そうすると、貴マンションの「専用庭」はその共用部分若しくは敷地の一部であることなります。したがって、管理規約が有効に成立している限り、その使用に関する定め、すなわち、「専用庭」は有償という規定は、それが5でのべる「区分所有者間の利害の衡平」に反するものでない限り、有効であると考えられます。

(3)マンション標準管理規約(単棟型)はどのように規定しているか
ご参考までに、国土交通省が住宅宅地審議会の答申にもとづいて2004年に作成したマンション標準管理規約(単棟型)における専用使用権に関する規定およびそれに対する同省のコメントをご紹介しておきます。

マンション標準管理規約14条第1項: 区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において『バルコニー等』という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。

第2項 一階に面する庭について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。

ご質問の「専用庭」は、第1項の「屋上テラス」若しくは「一階に面する庭」に該当するものと思われます。そうすると、この標準管理規約によれば、「専用庭」が一階にある場合は有償であり、「屋上テラス」に当たる場合には無償となります。このように一階に面する庭の専用使用権を有償とした理由は、「全ての住戸に割り当てることのできない専用使用権については、専用使用権を有する者に何等かの対価を支払わせることが、他の区分所有者との公平性という観点から望ましいと考えたため」です(国土交通省住宅局住宅総合整備課監修、民間住宅行政研究会編著、「マンション標準管理規約の解説」、大成出版社、2005、84頁))。

ただし、この14条に対するコメントは、「バルコニー及び屋上テラスがすべての住戸に付属しているのではない場合には、別途専用使用料の徴収について規定することもできる。」と述べています。このようなコメントをおいた理由も、「一階に面する庭」の専用使用権を有償とした理由と同じ理由です(前掲「マンション標準管理規約の解説」、84頁)。

標準規約のこのような考え方を前提とすると、貴マンションの一部住戸についてのみ、「専用庭」が付属している場合には、それが「一階に面する庭」であれ「屋上テラス」であれ、有償である旨管理規約で定めることもできることになります。

4 団地の管理規約が定めることのできる事項の範囲
(1)区分所有法66条により読み替えられた同法30条1項
2(2)で述べましたように、団地の管理規約については、区分所有法第二章が適用されます。団地の管理組合が団地の管理規約で規定することができる事項を定めているのは、区分所有法66条により読み替えられた同法30条1項です。

区分所有法66条により読み替えられた30条1項: 土地等又は第68条第1項各号に掲げる物の管理又は使用に関する第65条に規定する団地建物所有者相互間の事項は、この法律で定めるもののほか、規約で定めることができる。

したがって、団地の管理規約で定めることができる事項は、①土地等、②第68条第1項各号に掲げる物、すなわち、同条同項1号および2号に掲げる物に関する管理、使用に限られます。

イ 土地等
区分所有法66条は、「土地等」を「第65条に規定する場合における当該土地若しくは付属施設」と定義しています。「第65条に規定する場合」とは、「一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は付属施設(それらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合」です。その場合における「当該土地若しくは付属施設」というのですから、これは、団地建物所有者全員が共有する、団地内の土地若しくは付属施設です。すなわち、前記第1図の団地甲では、甲団地内の土地が、第2図のでは、団地乙ではその付属施設gがこれに当ります。

これらの土地や付属施設は、団地の管理組合形成の核となった土地や付属施設ですから、団地の管理組合は、当然、それらを管理する権限を有しており、したがって、それらの使用、管理について団地の管理規約で定めることができるのです。

ロ 区分所有法第68条第1項各号に掲げる物
「第68条第1項各号に掲げる物」については、同法68条の定める一定の手続を経て、これに関する管理、使用に関する団地建物所有者相互間の事項について定める権限が団地の管理組合に付与された場合にのみ、団地の管理規約でその管理、使用について定めることができます。

(イ)第68条第1項第1号に掲げる物
これは、「一団地内の土地又は付属施設(これらに関する権利を含む。)が、当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は付属施設」です(68条1項1号)(ただし、その土地または付属施設が、専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属する場合は除かれます)。たとえば、団地乙の場合に、Dマンションの敷地(E、Fマンションの敷地についても同じ)がこれに当ります。

この場合には、「第68条第1項第1号に掲げる物」に該当する土地の全部または付属施設の全部について、それぞれ共有者の4分の3以上でその持分の4分の3以上を有するものの同意があった場合にかぎり、それらが団地の管理規約の対象になります。たとえば、団地乙の場合には、マンションDの区分所有者の4分の3以上でその持分の4分の3以上がマンションDの敷地の管理または管理について団地の管理規約で定めることに同意し、マンションE、Fの区分所有者もその敷地について同様の同意をした場合に、マンションDEFの敷地全部の管理、使用について団地の管理組合が定めることができることになります(68条1項柱書)。

たとえば、D、E、Fのマンションの区分所有者全員が付属施設gを共有している場合には、これを核として団地の管理組合が成立します。しかし、その団地の管理組合が管理権限を有するのは、「土地等」に限られます。D、E、Fマンションの敷地を管理する権限は、その段階では、それぞれのマンションの管理組合にあり、それぞれの管理組合が、その管理規約により、その使用、管理について定めることができます。しかし、第68条1項柱書が定めている手続が行われると、それらの敷地を管理する権限は団地の管理組合に移り、団地の管理規約により、その使用、管理について定めることになります。

(ロ)第68条第1項第2号に掲げる物
これは「当該団地内の専有部分のある建物」、たとえば、団地甲のマンションABC、団地乙のマンションDEFです。

この場合には、「その全部につきそれぞれ第34条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議」が行われた場合に、各マンションの建物の使用、管理について、団地の管理規約で定めることができることになります(68条1項柱書)。

たとえば、団地甲のマンションABCそれぞれにおいて、区分所有者集会を開き、そこで区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で、それぞれのマンションの管理および使用に関する区分所有者相互間の事項について決定する権限を団地の管理組合に付与する旨決議した場合にはじめて、マンションABCの管理権限は団地の管理組合に移り、その使用や管理について団地の管理規約で定めることができることになります。

もっとも、団地マンションを分譲する場合には、分譲時に、その団地内の各マンションの建物の管理についても定めている団地管理規約について、区分所有者全員から書面による同意を得ているようです。この場合には、特に、68条1項柱書の手続が行われていなくても、団地内の各マンションの建物を管理する権限は、団地の管理組合に付与されるものと考えられます。

貴マンションが団地内にあり、団地の管理組合が成立しており、団地の管理規約で専用庭について定められている場合には、その規定が有効であるためには、団地の管理規約の制定に当たり、上述した(イ)(ロ)の手続がとられていたことが必要です。何故ならば、専用庭が貴マンションの共用部分の一部である場合には、それは、「当該団地内の専有部分のある建物」の一部ですし、それが団地内の土地の一部である場合には、その土地が「土地等」に該当する場合を除き「第68条第1項第1号に掲げる物」に該当するからです

5 専用庭に関する管理規約・団地の管理規約の衡平性
管理規約若しくは団地の管理規約が、貴マンションの共用部分および敷地の使用、管理について定めることができる場合に、残る問題は、規約でバルコニー無償、「専用庭」有償と定めることが区分所有者間の衡平性を害しないか、という問題です。

(1)区分所有法30条3項、同法66条により読み替えられた同法30条3項
区分所有法30条3項は、管理規約は、「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは付属施設(建物の敷地又は付属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。」と規定しています。また、同法66条は、30条3項の文言の一部を読み替えた上で、団地の管理規約について準用される旨定めています。

本条に反し、区分所有者間の利害の衡平を著しく害する管理規約、団地の管理規約の規定は、無効と解されています(吉田徹編著、「一問一答 改正マンション法 平成14年区分所有法改正の解説」、2003、35頁)。

(2)下級審判例
どのような場合に区分所有者間の利害の衡平を著しく害する、若しくは著しく害するものではないと判断されるかを示すために、下級審判例を2つ紹介しておきます。30条3項は2002年の区分所有法改正で挿入された条文です。しかし、これが制定される前でも、判例は、規約の規定が利害の衡平を著しく害する場合には、民法90条を根拠に、それが無効であると判決していました。以下の判例は、何れも、その時期の判例です。ただし、これらは、専用使用権を有償と定める規約が区分所有者間の衡平を著しく害するか否かが争われた判例ではありません。

①本件ビル本館の屋上を住宅部門の庭園として同部門の区分所有者のみが専用使用し、また、本件ビルの別館の屋上は別館部門の区分所有者のみが有料駐車場として独占的に使用、管理している場合において、本館の住宅部門、店舗部門、別館部門の区分所有者全員で構成する管理組合の管理費負担の配分について、住宅部門、別館部門の区分所有者のみが上記の利益を享受している利益がまったく考慮されていないとしても、そのような管理費負担の配分を定めた総会決議の内容が、ただちに、著しく不公正、不公平であるということはできない(東京地判昭和58年5月30日判例時報1094号57頁)。

②管理費等の額について法人組合員と個人組合員とで差異を設けることは、その該当者の承諾を得ているなど特段の事情のない限り、その差異が合理的限度を超え、一部の区分所有者に対して特に不利益な結果をもたらす場合には、原則として民法90条の規定する公の秩序に反するというべきであり、かかる合理的限度を超えた差別的取扱いを定めた規約及び総会決議は無効である(東京地判平成2年7月24日判例時報1382号83頁)。

(3)バルコニー無償、「専用庭」有償と定めた規約の規定は、区分所有者間の衡平性を著しく害するか
ご質問の事案は、要約すると、ベランダと専用庭(マンションの共用部分または敷地若しくは団地の土地の一部であると考えておきます)について、①ともに専用使用権が設定されている、②使用状況、管理内容では相違はない、③設置状況については、前者が大多数の住戸に設定、後者は一部の住戸に設置という違いがある、④修繕費の負担者については、前者が管理組合、後者が専有使用権者という違いがあるという事案です。

区分所有法30条3項(同法66条による準用を含む)は、区分所有者間(団地の管理規約の場合は団地建物所有者間)の利害の衡平を図るに当たり、「形状、面積」を考慮すべき旨規定しています。ご質問の事案では、ベランダは大多数の住戸に設置されているのに対し、「専用庭」は一部の住戸にしか設置されていないとのことです。そうすると、「専用庭」に専用使用権を有する区分所有者(団地建物所有者を含む。以下同じ。)は、ベランダにしか専用使用権を有しない区分所有者に比べて、ベランダと「専用庭」とをあわせた面積が広いのではないのでしょうか。

3(3)で述べましたように、標準管理規約では、敷地の一部たる専用庭に対する専用使用権は有償でしたし、そのコメントは共用部分の一部たる屋上テラスに対する専用使用権も、それが限定的である場合には、有償とする旨規約で定めることができる旨述べていました。これは、「全ての住戸に割り当てることのできない専用使用権については、専用使用権を有する者に何等かの対価を支払わせることが、他の区分所有者との衡平性という観点から望ましい」という理由によるものでした。貴マンションの場合も、このような考慮があったのではないでしょうか。そうであれば、むしろ、「専用庭」の専用使用権を有償と定める方が衡平に合するようにも思えます。

また、区分所有権の分譲価格は、区分所有法30条3項の「その他の事情」に含まれると解されています(稲本洋之助・鎌野邦樹、「コンメンタール、マンション区分所有法 第2版」、日本評論社、2004、182頁)。したがって、貴マンションの住戸の分譲価格を設定するときに「専用庭」の専用使用権が有償であることが考慮されていた場合には、専用使用権の有償、無償に関する規約の衡平性を判断する場合に、これも考慮されることになります。

最後に、修繕費負担に関するバルコニーと「専用庭」との取扱いの違いは、専用使用権の有償、無償に関する規約の衡平性を判断する際に考慮すべき事情に当たるか、という問題について考えます。これについて触れた見解は見あたりませんでした。しかし、専用使用料支払義務の実質的な根拠は、一部の区分所有者が専用使用権を有する共用部分や敷地の面積が、他の多くの区分所有者のそれよりも広い場合には、それに見合う対価を支払うべきである、ということですから、共用部分の修繕費の負担の問題は、専用使用権の有償・無償の問題とは切り離して考えた方がよいのではないでしょうか。

もっとも、貴マンションの規約が、「専用庭」の修繕は、すべて、専用使用権者の負担により行う旨定めているのであれば、貴マンション固有の事情があるのかもしれませんから確言はできませんが、再検討の余地があるかもしれません。その理由はこうです。修繕費の負担が問題となる「専用庭」は、通常、屋上テラスとかルーフバルコニーと呼ばれている共用部分であると考えられます。その場所は、他の区分所有者の住戸の屋根の一部に当ります。したがって、そこの管理が疎かになると、直下の住戸やその周辺の住戸に雨漏りなどの被害をもたらすおそれがあります。したがって、通常の使用に伴う管理は別として、原則としては、管理組合が、その負担と責任で管理し、他の共用部分と同様に定期的な修繕を行うのでなければ、他の区分所有者の利益を害するおそれがあります。

ご参考までに、これに関する標準管理規約(単棟型)21条1項(標準管理規約(団地型)21条1項も、実質的には、これと同じ内容です)を紹介しておきます。

規約(単棟型)21条1項:「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」

同条でいう「バルコニー等」は、バルコニー、玄関扉、窓枠、一階に面する庭及び屋上テラスを指します(規約(単棟型)14条1項)から、一階に面する庭や屋上テラスの管理は、「通常の使用に伴うもの」は専用使用権者が、それ以外は管理組合が「その責任と負担において」行うことになります。すなわち、「バルコニーや屋上テラスなどが老朽化してきたため大規模修繕を行ったり総会の決議に基づき全戸一斉にバルコニーや玄関扉のペンキの塗替えを行うといった、『通常の使用に伴う』とはいえない管理については、管理組合がその責任と負担において行うことにな」ります(前掲「マンション標準管理規約の解説」、大成出版社、2005、107頁)。

3(3)で述べましたように、標準管理規約によると、一階に面する庭の専用使用権は有償であり、屋上テラスの専用使用権も有償とすることを許容しています。他方、「バルコニー等」の修繕費は、一律に、「通常の使用に伴うもの」は専用使用権者負担、その他は管理組合負担です。したがって、標準管理規約では、専用使用権の有償、無償の問題と修繕費の負担の問題とは、切り離されています。また、それと同時に、「通常の使用に伴う」修理である限り、バルコニーであれ、屋上テラス・一階に面する庭であれ、専用使用権者の負担と責任で行うことになっています。

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