大規模団地再生のヒントはありませんか?

都市機構の分譲した大規模団地の管理組合の幹部をしています。隣接して都市機構の賃貸の大規模団地があったり他の分譲団地があったりしても、再生は個々の団地での建替えしか検討できません。海外の事例も含めて、大規模団地再生のヒントはないのでしょうか?

大規模団地再生のヒントはありませんか?

大規模な郊外団地は、地域の拠点としての役割を担っているため、地元の公共団体も対応が難しい状況です。大規模で、多数の住棟があるために、管理組合の中での意思疎通や合意形成も難しい状況は、関係者の皆様がご存じの通りです。

こうした大規模住宅団地の再生は、欧州でも幾つか行われていますが、都市構造の再編や社会的課題の総合的改善という全体計画の中で、地元公共団体や国が支援する取り組みが見られます。

都市構造の再編の中で考えるべき事項は、新規に計画的に建設されたニュータウンや団地が、近代都市計画の機能主義や合理主義を徹底するために、周辺の地形や既成市街と融和できていない道路形体や住棟配置になっている点です。プライバシーを重視するために、幹線道路から住棟は離隔されていたり、死角になってしまう場所があちこちにあるケースも見られます。欧米でも、そうした考えで戦後の団地の多くが建設されましたが、1990年代から行われている団地再生では、幹線道路だけでなく人通りのある道に、建物の正面を向け、(プライバシーを多少犠牲にしても)植栽で飾れるバルコニーや大きな窓や出窓を設けるように変わってきているのです。

これは、人口減少や高齢化の影響で、団地に人影が少なくなり、犯罪不安や寂寞感が増えていることとも関連しているようです。日本でも、1970年頃まで、将来的に限りなく増加すると考えられた車と人の通行を分ける「歩車分離」の考え方や、通過交通の侵入を避けるための「クルドサック」の考えで建設された郊外団地がありますが、高齢の住民がタクシーや送迎バスを利用するにも不便で困っている状況が見られます。

我が国でも、そのような議論が始まったばかりなのですが、その必要性を論じる行政関係者や専門家が増えているので、管理組合のなかで意思疎通を図っておくことが、先進的な国家的プロジェクトに対応できる道筋につながると考えられます。

もう一つ、大切なのは、社会的課題です。日本全体がそうなっているのですが、家族が小さくなっており、一人暮らしや夫婦のみの世帯が過半を占めるようになっています。そういった地域では、犯罪の不安感が高まっていたり、防災活動や地区や近隣での助け合い活動が困難になっているケースもみられます。

介護や介助の必要な家族が同居するケースも少なくありません。そういった年齢階層の偏りを、少しでも改善できる取り組みを、団地の再生に合わせて行うことが大切になってきます。年金生活に入っている高齢者のおかれた状況や、雇用や賃金が安定しない若年層の誘致といった取り組みも必要になっている状況に対しては、自治体との連携・協力がなければ対応できないことをよく理解しておく必要があります。

団地の再生では、何を再生するのかということが大切です。「資産価値を上げる(もしくは持続させる)」「安心して住み続けられる」「生活が楽しく健康になれる」などですが、これらが一致できる再生は、難しくなってきています。特に、郊外の団地では、若い人が少なくなっている点、高齢者が外出するための地域交通サービスや生活用品の店舗が縮小している点など、気がかりな点も増えています。そういった一つ一つの問題での、対応策やグッドプラクティスは幾つかありますが、総合的にこれが「再生」のベストプラクティスという事例は見あたりません。

いわゆる団地より少し小規模の集合住宅で、建替えに成功した事例(同潤会江戸川アパートメント、諏訪町住宅など)も大いに参考になりますが、建替えには至らなくても自治会活動の盛んな団地の取り組みの中に、将来的な可能性を感じる事例は見られます。管理組合としての大規模修繕計画の議論や資産保全の議論だけでは、弱者化する住民を団地再生に巻き込むことは難しいと思われます。

フランスでは、郊外団地の中にストリートを通し、沿道型の店舗付き住棟を誘致し、にぎわいや楽しさ、防犯効果を高めるような再生が行われています。静かで、通過交通がない住宅団地という基本を変える試みです。英国では、アーバンビレッジの考えで、おしゃれで誇りの持てるまち(団地)づくりに外国人居住者も参加して再生が行われています。

我が国では、地域の大学が協力するケースが見られます。時間を掛けて取り組む場合の有効な方策の一つと考えられます。

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