抵当権者への対応

建築後約40年を経過し、建替えを検討している東京都内のマンションです。現在、当マンションでは建替え検討が進んでいますが、当マンションには、自営業の区分所有者の中には、マンションに根抵当権を設定されている方が何人かおります。こうしたケースでは、抵当権を一度抹消して付け替えれば問題はないのですが、特に運転資金をまかなうための根抵当権を設定している区分所有者の場合には、根抵当権の付け替えを拒むケースも多いと聞いております。こうした場合、建替え円滑化法を使った場合には、抵当権者の同意があれば抵当権を抹消せずに新しいマンションに抵当権を移行することができると聞いておりますし、同意が得られない場合には、正当な理由があれば権利変換手続きで抵当権を強制的に移転させることもできる等とも聞いております。このあたりの実際について、教えてください。

円滑化法では、「権利変換」の仕組みをとっているため、従前のマンションの権利が、再建後のマンションの権利にそのまま変換されます。そのため、従前のマンションにあった抵当権も、そのまま再建後のマンションの変換することが可能となります。これは、権利変換が都道府県知事等の認可により行われるためであり、マンション建替えに円滑化法を使うメリットの1つであるとも言われております。

ところで、権利変換計画に際して、抵当権等の変換を行う場合には、抵当権等の同意を得る必要があります(円滑化法第57条第2項)。ところが現状では、円滑化法を利用したマンション建替え事例もあまり多くないため、金融機関が円滑化法そのものをよく理解していないことも多く、この同意の手続きに時間がかかるケースが多く見受けられます。結果的には、時間がかかるだけで、ほとんどのケースでは金融機関からの同意も取れておりますが、普通の区分所有者の方だけでは、金融機関の担当者に対しての説明も困難であることから、参加組合員やコンサルタント等が区分所有者に同行して、説明をすることも多いようです。

いずれにしても、同意の取得には時間と手間がかかるケースも多いようですので、建替えに際しては、こうしたことを鑑みたスケジュール設定が必要かと思います。

次に、抵当権者から同意を取れなかった場合ですが、円滑化法では、「(抵当権者等から)同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第1項後段の規定による認可を申請することができる。」(円滑化法第57条第3項)と規定しております。この場合の問題は、「同意を得られない者に対して損害を与えないようにするための措置」で、具体的に、損害を与えないためには何をすればよいかということが問題となります。

ところで、抵当権者等が同意をしないままマンションの建替えを行う場合に、その抵当権者等に損害が発生する場合とは、具体的には「事業の頓挫」が想定されます。逆に言えば、建替わってしまえば、少なくとも担保価値も従前以上にはなるはずですから、事業さえ終了すれば、抵当権者等に損害を与えることにはならないと思われます。

国土交通省では通達で、事業の損害に対応した措置として5つの手法を挙げております。この中で現実的な手法は、次の二つではないかと思われます。

(1)事業が頓挫した場合、参加組合員等の事業協力者が未同意者に対し、損害賠償責任を負うことをあらかじめ約する

(2)事業が頓挫した場合、区分所有者等が被担保債務の弁済又は別の不動産への権利の付け替えを行うことや、施行者又は十分な資力のある第三者が代わりに被担保債務の弁済を行うこと等をあらかじめ約する

なお、上記の措置以外に、「同意が得られない理由」も重要です。実際に行政が、権利変換計画の認可をおろす場合には、「相当な努力をして同意を得られるようにしていること」を示す必要があると思われます。現実に、こうしたことを行った結果、抵当権者の権利が得られない状況であるにもかかわらず、権利変換計画が認可された事例も出ていることは付記しておきます。

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