1 利用上の独立性とは
2 構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分
3 判例の分析
(1) 判例の4類型
(2) 当該建物部分それ自体の利用上の独立性
(3) 用途の重畳
(4) 複数の建物部分の一体的利用
(5) ピロティ、ロビー、バルコニー
4 資料ーー利用上の独立性に関する判例
1 利用上の独立性とは
区分所有権は、社会の取引通念上は一個である建物の部分の上に成立する所有権である。区分所有法1条によると、1棟の建物の部分がこの所有権の目的(客体)となりうるための要件は、イ 構造上区分された部分であり(ただし、そのような部分が複数あることが必要)、かつ、ロ 独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものであることである(区分所有法1条、2条1項)。区分所有法の立法担当者であった川島一郎判事は、建物のある部分がロの要件を満たしていることもって、その部分に「利用上の独立性」があると呼んだ(川島一郎、「建物の区分所有に関する法律の解説(上)」、法曹時報14巻6号847頁)。この用語法は、今日でも踏襲されている(たとえば、法務省民事局参事官室編、「新しいマンション法」、1983、商事法務研究会、68頁)。
区分所有法制定前に、判例は、建物の部分が区分所有権の目的となるのは、区分された建物の部分だけで「独立ノ建物ト同一ナル経済的効用ヲ全フスルコトヲ得ル場合ニ限ル」と判示していたが(大判大正5年11月29日民録22輯2333頁など)、「利用上の独立性」という要件を定めた趣旨はこの判例と同じであるといわれている(川島、上掲「解説(上)」、847頁)。「独立して建物としての用途に供することができる」建物部分としては、区分所有法1条の挙げている住居、店舗、事務所、倉庫のほかに、講堂、劇場、停車場が挙げられている(川島、上掲「解説(上)」、847頁)。
2 構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分
区分所有法は、構造上の独立性、利用上の独立性の認められる建物部分は所有権の目的となりうる、と規定する(同法1条)とともに、他方で、「構造上区分所有者の全員又は一部の共用に供せられるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならない」と規定している(同法4条1項)。共用部分の範囲については、区分所有法2条4項が区分所有建物の専有部分以外の部分は共用部分である旨規定しているが、この4条1項は、構造上区分所有者の共用に供されるべき建物の部分が法律上当然に2条4項の「専有部分以外の建物の部分」として共用部分となることを明確にした規定である(川島一郎、「建物の区分所有に関する法律の解説(中)」、法曹時報14巻7号1047頁)。本条によると、建物部分に構造上の独立性が認められる場合でも、「構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」に該当すれば、その建物部分は共用部分となる。言い換えれば、この建物部分の「利用上の独立性」は認められない。
「構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」の例としては、区分所有法4条1項の挙げている廊下、階段室のほかに、通常はエレベーター室が挙げられている。
3 判例の分析
構造上の独立性という要件は、判例では広く解釈されているので(「構造上の独立性」の項目参照)、ある建物部分が専有部分、共用部分のいずれに属するかの決定にとっては、利用上の独立性という要件が重要な意義を有している。それ故、判例では、利用上の独立性に関するさまざまな論点について判示されている。以下では、用語集としては異例であるが、判例の分析を通じて、判例では、どのような場合に利用上の独立性が認められ、あるいは、否定されているかを明らかにしたい。
(1) 判例の4類型
「利用上の独立性」の存否に関する判例は、次の4類型に分けることができよう。
第一は、特定の建物部分の用途をそれ自体として評価した場合に「利用上の独立性」が認められるかに関する判例である。たとえば、ある建物部分が倉庫として、あるいは、管理人室として用いられうる場合に、その建物部分の利用上の独立性は認められるかに関する判例がこれにあたる。
第二は、特定の建物部分が用途Aと用途Bとに供されているところ、かりにその建物部分が用途Aのみに供されていれば利用上の独立性が認められ、用途Bのみに供されていればこれが認められないという場合ーー以下では、建物部分がこのような用途A、Bに重畳的に用いられている場合を、「用途の重畳」と呼ぶーーその建物部分全体に利用上の独立性は認められるかに関する判例である。たとえば、駐車場として用いることができ、かつ、そのために用いられている建物部分に共用設備(たとえば、各種の配管や配電盤)が設置されている場合である。この場合に、その建物部分が駐車場としてだけに利用されていれば「利用上の独立性」は認められるし、共用設備のみに利用されている場合において、他に適当な共用設備の設置場所がない場合には、利用上の独立性は認められない。しかし、両用途に用いられている場合には「利用上の独立性」は認められるであろうか。
第三は、ある建物部分Aそれ自体では「利用上の独立性」が認められるーー独立の建物として取引の対象となりうるような外形であるーーけれども、その建物部分Aを他の建物部分Bと一体としてその区分所有建物の維持・管理に用いる必要がある場合に、建物部分Aの「利用上の独立性」は認められるかに関する判例である。たとえば、管理事務室(建物部分Bにあたる)と管理人室(建物部分Aにあたる)とを使用して建物の維持・管理を行ってきたマンションにおいて、管理人室ーー独立に住居としても利用しうる外形を有しているーーの利用上の独立性を認めることができるかに関する判例がこれにあたる。
第四は、ピロティ、ロビー、バルコニーの利用上の独立性に関する判例である。第一から第三では、駐車場、倉庫、管理事務室、管理人室、共用設備室などの用途に供される建物部分について利用上の独立性の有無が問題であった。ピロティ、ロビー、バルコニーといった建物部分については、利用上の独立性の有無を検討するにあたり、これらとは異なる特徴があるのではないか、と考えられるので、これらに関する判例はここでは別に検討することとした。
以下では、これらの問題について、判例が、どのような基準に基づきどのように判断しているかを検討する。なお、「利用上の独立性」に関する判例については、判旨の抜粋を中心として、判決年月日順に4で紹介している。3で引用した判例に付されているイ、ロ等の符号は、4に掲げた判例に付した符号である。
(2) 当該建物部分それ自体の利用上の独立性
イ 一般的な基準
(イ) 最判昭和56年6月18日が設定した基準
最判昭和56年6月18日(チ判例)は、当該建物部分それ自体の利用上の独立性の基準について、構造上の独立性を有する建物部分が「それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する」場合に利用上の独立性を有すると判示している。この判示が、区分所有法1条の「独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの」という文言に基づくことは明らかである。1で述べた立法の沿革に照らすと、これは、ある建物部分が、独立の建物としての経済的効用を有しうる外形を備えている場合には利用上の独立性が認められる、という趣旨である。
「外形」という文言は、判例上、「意思」に対立するものとして用いられる。たとえば、被用者が会社の車を私用運転して事故を起こした場合に会社が使用者責任を負うかについて、最高裁判所は、「民法715条に規定する『事業ノ執行ニ付キ』というのは、・・・広く被用者の行為の外形を捉えて客観的に観察したとき、使用者の事業の態様、規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りる」と判示している(最判昭和39年2月4日民集18巻2号252頁)。この場合には、被用者が会社の車を運転した意図がたとえ私用のためであっても、被用者の行為を客観的にみれば被用者の職務執行と認めれるのであれば、「事業ノ執行ニ付キ」という要件は充たされるということを表現するために「外形」という文言が用いられている。
最判昭和56年6月18日の上記判示においても、最判昭和39年2月4日と同じ趣旨で「外形」という文言が用いられているものと考えられる。すなわち、ある建物部分を客観的に観察して「独立の建物としての用途に供することができる」ものであれば、利用上の独立性が認められ、そうでなければ、利用上の独立性は否定される、その認定の際、当事者の意思如何は考慮されない、したがって、売買契約書やパンフレットがその建物部分について共用部分あるいは専有部分と記載していたことは、その部分の利用上の独立性を認定するか否かには考慮されない、という趣旨であると解される。
この基準によると、たとえば、ある建物部分が管理人室として使われている場合において、それが人の居住し生活しうる外形を有していれば、たとえ、そのマンションの分譲の際のパンフレットには「管理人室」は共用部分である旨記載されていても、その建物部分それ自体としては「利用上の独立性」が認められる(たとえば、ノ判例は、A部分が駐車場である旨パンフレット、管理規約に表示されていたにもかかわらず、利用上の独立性を否定した)。
「独立の建物としての用途に供することができるような外形」として、多くの判例において考慮されているのは、外部への出入口の存在である。 外部への出口のない建物の部分、たとえば隣室を通らなければ建物の廊下へ出られないビルの一室は、社会通念上独立して建物としての用途に供し得るものではないと認められるから、利用上の独立性を有せず、したがって区分所有権の目的とすることはできない。これは、すでに区分所有法立法時から指摘されていた(川島、上掲「解説(上)」、849頁)。最判昭和56年6月18日についての遠藤判事の解説も、「それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分」という判示は、主として、構造上の独立性を有する建物部分が独立の出入口を有することを意味している、と説明している(遠藤賢治、「最高裁判例解説[24]」(最判昭和56年6月18日))。
(ロ)区分所有者にとり必要不可欠
下級審判例のなかには、最判昭和56年6月18日以後にも、ある建物部分を特定の用途に使うことが区分所有者の全員または一部にとって必要不可欠であるか否か、あるいは、それがその建物の維持、管理上必要不可欠か否かを基準として、利用上の独立性の有無を判断している判例が少なからず存在する(たとえば、ワ判例の(イ)、レ判例の(ハ)(ニ)、ウィ判例の(イ)、ツ判例)。これらの判例は、区分所有法4条1項の「構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」という文言を「利用上の独立性」の有無を認定する基準にしていると考えられる。
ロ 各種の用途と利用上の独立性
(イ) 車庫、屋内駐車場
建物部分が車庫若しくは駐車場として利用されている場合については、最判昭和56年6月18日以前から、利用上の独立性を認めるものが多かった(ニ判例の(ロ)、ホ判例、ヘ判例の(イ))。駐車場は区分所有者にとり不可欠であることを理由としてその利用上の独立性を否定した判例(ト判例)もあったが、最高裁は、その建物部分が「独立して建物としての用途に供することができるもの」であることを理由として、原審判決を破棄差戻しした(ヌ判例)。その後の下級審判例は、いずれも、建物部分の用途が車庫・屋内駐車場であることは、それだけであれば「利用上の独立性」が認められることを前提として、共用設備の設置場所や通路としての用途がこれに付加された場合に、その建物部分が「独立して建物としての用途に供することができる」建物部分となるか否かを検討している(ル判例の(ロ)、ヲ判例、レ判例の(ヘ)、ソ判例、ム判例の(イ))。
(ロ) 倉庫、トランクルーム
倉庫については、最高裁が、「それ自体として独立の建物としての用途に供する外形を有する建物部分である」と判示し(リ判例)、その後の下級審判例(チ判例、レ判例の(ロ)(チ))も同様の判示をしている
(ハ) 管理事務室
管理事務室(判例によっては、管理事務所、受付管理室などの名称が用いられている)とは、管理人が外部からの出入りの監視や出入りする者との応対などの管理業務を行うための建物部分である。通常、区分所有建物の玄関ホールに接している。
多くの下級審判例は、管理事務室として使われている建物部分の利用上の独立性を否定している(ワ判例の(イ)、レ判例の(イ)、ウィ判例の(イ))。その理由としては、当該建物の管理にとり、管理事務室が不可欠であることに加えて、当該建物部分の構造や位置関係からみて、その建物部分が管理事務室用に作られていることが挙げられている。
なお、1つの建物部分が管理事務所および管理事務室の用途に用いられている場合については、(3)ロ(ハ)参照。
(ニ) 管理人室
管理人室とは、管理事務室で区分所有建物の管理に当たる管理人が休憩や宿直に用いる建物部分である。通常管理事務室に接しており、また、台所、便所、風呂の付いた和室であり、テレビ、冷蔵庫などの設備が置かれていることが多い。なお、1つの建物部分が、管理事務室および管理人室の用途に用いられている場合については(3)ロ(ハ)参照。
管理人室の利用上の独立性に関しては、二つの論点がある。第一は、管理人室それ自体を取り上げた場合に、利用上の独立性が認められるかである。この点については、判例は、独立の出入口を有すること、住宅として独立に利用しうる内部構造であることを理由として、いずれも利用上の独立性を認めている(ル判例の(イ)、ワ判例の(ロ)、タ判例)。
第二は、たとえそれ自身としては利用上の独立性を有するとしても、その建物部分が管理事務室の仕事の遂行にとり不可欠である場合には、これは利用上の独立性を有しないのではないか、という論点である。これについては(4)イで述べる。
(ホ) 各種の共用設備の設置されている室
自家発電室、バッテリー室(レ判例の(ハ))、メーター室(レ判例の(ニ))など、各種共用設備の設置場所としてもっぱら使われている室については、判例は、そのような共用設備はマンションの区分所有者全員に不可欠であり、現在、これらが設置されている室を他の用途に使うことは予測できないことを理由として、利用上の独立性を否定している。しかし、以前は電話交換機室として使われていた機材室については、区分所有者らにとり不可欠とは認められないことを理由として、利用上の独立性を認めている(レ判例の(ト))。
ハ 区分所有者にとり必要不可欠という基準が何故使われるのか
ロで述べたところから明らかなように、最判昭和39年2月4日以後の下級審判例でも、当該建物部分を当該用途に使うことが「区分所有者にとり必要不可欠か否か」を基準として、利用上の独立性の有無を判断している判例が少なくない。その理由は、その建物部分が「それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を備えているか否か」を基準として利用上の独立性の有無を判断すると、不当な結果になることが少なくないからである。必要不可欠基準を使い、利用上の独立性を否定し、法定共用部分と認めた判例の多くは、当該建物部分が管理事務室や共用設備室に使われている場合である。これらの建物部分は、多くの場合、ある程度の改修をすれば、倉庫や場合によっても店舗や住居にも転用可能な建物部分であり、「独立の建物としての用途に供することができるような外形」という基準の下では、利用上の独立性を認める余地があった、と考えられる。しかし、当該区分所有建物の円滑な維持・管理のために管理人の常駐や各種の共用設備が必要であるとすれば、その建物部分をこれに使うのがもっとも適切であり、それにはその建物部分を法定共用部分と認める必要があると裁判所は判断したものと思われる。
逆に、当該建物部分の利用上の独立性を認める場合には、判例は、「独立の建物としての用途に供することができるような外形」という基準を用いることが多い。
(3) 用途の重畳
イ 一般的基準
(イ) 最判昭和56年6月18日が設定した基準
構造上の独立性を有する建物部分内に、電気の配線、ガス・水道の配管、冷暖房設備、消火設備、昇降機など、建物に附属し、効用上その建物と不可分の関係にある「建物の附属物」がある場合に、その建物部分は共用部分とされるのかは、区分所有法の立法時から提起されてきた問題であった(遠藤、上掲「最高裁判所判例解説[24事件]」)。この問題について、最初に判示した最高裁判例は、最判昭和56年6月18日(チ判例)である。
同判例は、構造上の独立性を有する建物部分が、「それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する」場合には、「①そのうちの一部に他の区分所有者らの共用に供される設備が設置され、このような共用設備の設置場所としての意味ないし機能を一部帯有しているようなものであっても、②右の共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、③その余の部分をもって独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができ、かつ、他の区分所有者らによる右共用設備の利用、管理によって右の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがなく、反面、④かかる使用によって共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合には、⑤なお建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権の目的となりうる・・・。」(①から⑤の数字は引用者が挿入)と判示した。
すなわち、この判例は、建物部分がそれ自体として利用上の独立性を有するーーこれは、その建物部分の外形に基づいて判断されるーー場合には、その建物部分に共用設備が設置されていても、それに要するスペースが一小部分にとどまり、かつ、本来のその建物部分の利用と共用設備の設置に伴うその部分の利用とが両立するのであれば、利用上の独立性を認める妨げとはならない、というものである。
(ロ) 登記実務
登記実務においては、マンションの管理受付室について、昭和50年1月13日民第3147号民事局長通達が以下のような基準を定めている(遠藤、上掲「最高裁判例解説[24]」による)。
a 内部に各専有部分を集中管理する消防設備、警報装置など恒常的共用部分が設けられ、常時、来訪者、配達物などの処理ができる受付者の常駐する構造を有している形態の場合:共用部分。
b 管理人が居宅として使用し併せて管理事務を行っているが、共用施設がない構造形態の場合:専有部分。
c 管理受付室の構造はaと同様であり、かつ、管理人が居宅として使用し併せて管理事務を行っているが、そのうち、共用設備が受付室及び管理人室の双方に設けられている構造形態の場合:共用部分。
d 共用部分が受付室のみに設けられている構造形態の場合:専有部分。
ロ 用途の重畳の諸態様
以下では、「それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する」建物部分の全部または一部が、同時に、「区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物部分」でもある場合に、その建物部分の利用上の独立性は認められるのはどのような場合かについて、判例に基づいて説明する。
(イ) 駐車場・車庫と共用設備、通路との重畳
駐車場若しくは車庫内に各種の配管、マンホールなどの共用設備がある場合に、その建物部分の利用上の独立性が認められるか、については、最判昭和56年6月18日(チ判例)以前には、高裁判例が分れていた(ヘ判例はこれを認め、ト判例はこれを否定していた)。最高裁は、チ判例においてヘ判例への上告を棄却し、ヌ判例においてト判例への上告を認め、原判決を破棄差戻しした。
ヌ判例の事案は、チ判例とは異なり、共用設備の清掃(年1,2回)、点検・消毒薬投入(月1回)のために車庫内への立入りが必要な事案であった。最高裁がこのような事案についても利用上の独立性を認めたので、チ判例の示した要件が「かなり広汎な事例に充足されることが」示された、と評価されている(遠藤賢治、「最高裁判所判例解説[31]」(最判昭和56年7月17日))。ヌ判例後は、駐車場・車庫と共用設備や専有部分への通路とが重畳している事案において、下級審判例は、利用上の独立性を認めている(ル判例の(ロ)、ヲ判例、レ判例の(ヘ)、ソ判例)。
(ロ) 倉庫と共用設備との重畳
これについては、ニの2判例の(ロ)が、共用設備操作の必要上1日数回出入りをしなければならないことを理由として、利用上の独立性を否定し、また、ヘ判例の(ロ)も、第1倉庫、第2倉庫の利用上の独立性が争われた事案において、第1倉庫におかれている配電盤や換気、汚水処理、揚水ポンプのスイッチの操作のため管理人が1日に数回出入りする必要があることを理由として、第1倉庫、第2倉庫全体が共用部分であると判示した。
最高裁は、ヘ判例の(ロ)について、上述した最判昭和56年6月18日(チ判例)の一般的基準に基づき、少なくとも、第2倉庫については、共用設備のために倉庫の排他的使用が制限を受けることが明確にされていない、という理由で、原判決を破棄差し戻ししている。
最高裁判例の後は、レ判例の(チ)が、トランクルームと共用設備とが重畳している事案において、トランクルームの利用により共用設備の保存等に影響が生じる等の事情は認められない、という理由で利用上の独立性を認めている。他方、ノ判例の(イ)は、地下2階のスペースについて、本来計画していた駐車場利用ができなくなったので倉庫利用に転用したところ、そのスペースに設置されていたゴミ集積場が使えなくなったという事案において、そのスペースの利用上の独立性を否定している。
したがって、結局、倉庫においても、利用上の独立性の有無は、最判昭和56年6月18日(チ判例)の一般的基準により判断されている、といえよう。ただ、駐車場に比べて、倉庫利用では建物部分への出入りを厳しく規制する必要があるので、共用設備の維持、管理や使用のためにその建物部分へ出入りする必要がある場合には利用上の独立性を認めることは難しい場合が多くなるのではないだろうか。
(ハ)管理人室と管理事務室との重畳
ロ(ニ)で述べたように、管理人室は、それ自体としては、通常、利用上の独立性を有する。他方、管理事務室はロ(ハ)で述べたように、利用上の独立性を有しないと判断されることが多い。それでは、一つの建物部分が、この両用途に使われている場合には、利用上の独立性は認められるであろうか。
この問題について判示している判例は3件あるが、いずれも、上記の登記実務における分類では、c若しくはdに該当する事案である。これらのうちで、イ判例は、管理人室が管理事務室と「不可分の一体をなす」ことを理由として、利用上の独立性を否定している(管理人室は、管理事務室を通って出入りする構造であった)。他方、残る2つの判例(ニ判例の(イ)、ヨ判例)は、いずれも利用上の独立性を認めている(ニ判例では管理人室への出入りは受付室を通じて行う構造であり、ヨ判例では管理人室独自の出入口がある)。その理由として、これらの判例は、①この建物部分を使わない方法による管理形態も充分考えられるから、区分所有者全員にとって管理人室が不可欠なものとはいえないこと、②その建物部分を管理人室以外の用途に供することが期待され得ないものともいえないことを挙げている。ただし両判例は、いずれも、(4)イで述べる最高裁判例(ラ判例)より前の判例である。
(4) 複数の建物部分の一体的利用
①構造上の独立性を有する複数の建物部分が一体として特定の用途に供される外形を有している場合や、②構造上の独立性を有する建物部分がその内部に構造上・利用上の独立性を有する建物部分や区分所有法4条1項により共用部分として認められ得る部分を含んでいる場合がある。以下では、このような場合に、判例が利用上の独立性の有無について如何に認定しているかを検討する。
イ 管理事務室と管理人室との一体的利用
3(2)ロ(ハ)、(ニ)で述べたように、判例は、当初、管理人室は「それ自体として独立して建物としての用途に供することができるような外形を有する」建物部分であるから利用上の独立性を有する、管理人事務室は管理にとり不可欠であるから利用上の独立性を有しないと判示していた。
管理組合(原告)は、タ判例で始めて、当該マンションの管理にとって管理事務室と管理人室とを不可分一体のものとして利用することが必要であることを理由として、管理人室も利用上の独立性を有しない、と主張した。しかし、第1審は、「本件管理人室特に和室、台所、便所が配電盤や警報装置等のような共用設備と同視しうるほどに本件管理事務室と不可分一体の関係にあるものと認めることはできない。」と判示して、原告のこの主張を退けた。
その事件の控訴審(ツ判例)では、管理事務室の構造(便所がない)、広さ(約8.2平方メートル)(管理事務室は狭く、マンションの円滑な管理には管理人室が不可欠)、管理人室の位置(玄関、ロビ-等に面している)、構造(管理事務室との間はガラス引き戸を通って自由に出入りできる)からみて住居として一般取引の対象とすることは困難であり、事務所としての用途も限定的であること、当初から管理事務室と一体としてマンション全体の管理に使われるように設計、建築されたことが窺えることを理由として、管理人室の利用上の独立性を否定した。
最高裁(ラ判例)も、管理人室のみでは管理人にその業務を適切かつ円滑に遂行させることは不可能であることを理由として、「本件管理人室は管理事務室と合わせて一体として利用することが予定されていた」と判示し、上告を棄却した。
その後、下級審判例(ム判例の(ロ)、ウィ判例の(ロ))は、ラ判例と同様、「一体的利用が予定されている」という理由で、管理人室の利用上の独立性を否定している。ただし、レ判例の(ト)では、原告は、1階事務所(2階管理事務室と専用階段で結ばれている)は2階管理事務室(共用部分と認定されている)と一体であると主張したが、裁判所は、1階事務所を管理事務室と一体として使用しなければならない事情は認め難いと判示し、1階事務所の利用上の独立性を認めている。
ロ 特定の建物部分への通路
ノ判例は、共用部分と認定された地下2階の建物部分(A部分)(そこは、駐車場用建物部分であったが、駐車場には不適だったので、倉庫として用いられていた((3)ロ(ロ)参照))への通路たる建物部分(B部分)の利用上の独立性について、B部分はA部分への通路とすることが予定されており、実際にも、A部分への通路として使用されていたから、B部分はA部分と機能上一体であるという理由で、B部分の利用上の独立性を否定した。
ハ 複合的建物部分
判例では、建物部分Aが、用途aに供されている部分、用途bに供されている部分、さらに、場合によっては、区分所有法4条1項に該当する部分cなどから構成されている場合に、建物部分Aの利用上の独立性が問題となる場合がある。本項目では、このような建物部分Aを「複合的建物部分」と名付けた。レ判例では、①ゲストルーム5室、茶室、廊下及び階段室からなる建物部分、②電気室、休憩室、倉庫室2室がなる建物部分、③ゲストルーム5室、大ホール、廊下、ウエイティングルームからなる建物部分の利用上の独立性が争われたが、これらの建物部分が、ここでいう複合的建物部分である。
レ判例では、①および③の建物部分については、区分所有者にとって必要不可欠とはいえないことを理由として利用上の独立性を認め((ホ)(ヌ)の判示)、②の建物部分については、一体として全区分所有者へ電気等を供給するためのものであり、他の用途に使用することは予測しがたいことを理由として、利用上の独立性を否定している((チ)の判示)。
これらの複合的建物部分では、建物部分全体として利用上の独立性の有無が判断される。その結果、廊下や階段室は、通常は、区分所有法4条1項に該当し、利用上の独立性が否定されるが、①③における廊下や階段室のように、複合的建物部分全体の利用上の独立性が認められる場合には、その一部たる廊下や階段室も専有部分に属するも認められる(これについては、すでに、川島、上掲「解説(上)」、848頁がすでに指摘している)。また、逆に、②におけるように、複合的建物部分全体の利用上の独立性が否定される場合には、通常は利用上の独立性が認められる倉庫も法定共用部分に属すると認められる。
(5) ピロティ、ロビー、バルコニー
イ ピロティ
(イ)ピロティとは
「住宅不動産用語集」(インターネット)では、ピロティを次のように説明している。「1階部分の、柱だけで構成されている空間のこと。マンションなどの建物の1階に、住居をつくらず、エントランスホールや駐車場、駐輪場などとして活用する場合の、1階部分をピロティと呼ぶ。柱だけで構成されている壁のない階をもった建物の形式のことで、ピロティとは、フランス語で建物を支える杭のこと。ル・コルビュジェがこの手法を用いて、世界的に応用されるようになった。もともとは、実用面よりも、見た目の軽快感や新しさを出すというデザイン上の効果を求めたものだが、実用面での効果も小さくない。ただ、地震多発地域では、耐震性への配慮が必要といわれている。」
(ロ) 判例
判例は、ピロティが区分所有者全員にとり不可欠か否かを基準にして、その利用上の独立性の有無を判断している。すなわち、ネ判例では、被告(分譲会社)により駐車場として利用されていたピロティが、区分所有者にとり必要不可欠な、専有部分への通路部分を含んでいることを理由として、その利用上の独立性を否定している。
他方、ウ判例は、ピロティを、被告(分譲会社)は資材置場として、区分所有者も集会所や自転車置場として利用していたという事案である。判例は、同ピロティは、専有部分の所有、利用にとって不可欠な部分ではなかったこと、被告は、分譲時から本件ピロティ部分を専有部分として留保する意図であり、原告も、本件ピロティ部分が利用可能であることを前提として専有部分の分譲を受けたとは考えられないことを理由として、専有部分であると認定している。
ロ ロビー
レ判例の(ル)では、玄関ホールから引き続く位置関係にあり、区分所有者や来訪者の待合室等に適しているロビーについて、全区分所有者にとって不可欠なものとはいえない、という理由で、利用上の独立性を認めている。
ハ バルコニー
(イ) 判例
バルコニーについては、これを共用部分と認める判例が多いが、その根拠はさまざまである。以下では、4で紹介している判例にわたくしが気付いた判例を加えて、先ず判例を簡単に紹介する。
① 東京高判昭和47年5月30日(ロ判例):バルコニーを改築して温室とした場合に原状回復請求が認められた。管理規約によるとバルコニーは共有物であり、管理組合の建築協定はバルコニーの改築を禁止していることを理由とする。
② 最判昭和50年4月10日(ハ判例。ロ判例の上告審):「本件バルコニーは、被上告人組合の管理する共有物であり、上告人が本件バルコニーに加えた原判示の工事は、バルコニーの改築を禁止した判示の建築協定に違反する。」上告棄却。
③ 広島地判昭和54年3月25日判例タイムズ392号163頁:バルコニー部分の所有権移転登記手続請求が認められなかった。Xは、Y(分譲会社)から、本件居室部分とともにそれに接着するバルコニー部分を専有部分として購入。裁判所は、「原告が本件バルコニー部分についても居室部分とともにこれに附属して一体をなす専有部分としてその単独所有権を取得したものであることは明らかである」と判示したが、登記義務については、「売買契約において・・・不動産登記法上可能な範囲内での面積を床面積として表示登記また所有権保存登記等をなすべきことを予定したものとみられる。」と判示した上で、「不動産登記法上建物の床面積とは・・・一般には、その構造および利用上一個の独立した建物の広さと観念される範囲の面積を意味し、特に構造的には、屋蓋、壁、窓その他で外気を遮断するなど建物の内容として区画された範囲の面積を意味するものと解され、露天のバルコニー、ベランダなどを含まないと解される・・・」と判示した。
④ 横浜地判昭和60年9月26日(カ判例):建築協定に基づくバルコニー修理工事費用の負担金の支払い請求を認める。バルコニーが規約共用部分であると認める。
⑤ 東京地判昭和61年9月25日判例時報1240号88頁:バルコニーに設置した看板の撤去請求を認める。管理規約の規定に基づきバルコニーが共用部分であると認める。
⑥ 大阪高判昭和62年11月10日判例時報1277号131頁:パラペットに設置された看板の撤去請求を認める。「1階車庫部分の陸屋根(屋上)は、本件マンションの基本的構造部分であり、しかも、2階以上の区分所有者の避難用空間ないし通路としての機能・目的をも兼ね備えているから、共用部分にあたることは明らかであるところ、本件パラペット部分は、右陸屋根に接着し、かつ、その先端の保護ないし危険防止のためのものとみられるから、その構造上、右共用部分たる陸屋根と同様の性質を帯有する・・・。」。なお、パラペットは、不動産用語辞典(インターネット)では、次のように説明されている。「建物の屋上やバルコニーなどの周囲に、壁を立ち上げる形で作られたもので、『手すり壁』または『胸壁』『扶壁(ふへき)』ともいいます。構造物の先端を保護するとともに、意匠の面でも重要視されています。・・・」
⑦ 京都地判昭和63年6月16日判例時報1295号110頁:ルーフテラスに設置したサンルームの撤去請求を認める。管理規約の規定に基づきバルコニーが共用部分であると認める。
⑧ 東京地判平成3年11月19日判例時報1420号82頁(区分所有者=賃貸人と賃借人との争い):バルコニーに設置した物置の撤去請求を認める。バルコニーは建築構造上躯体の一部であり、管理上も共用部分と考えるのが一般的。
⑨ 東京地判平成3年12月26日判例時報1418号103頁。バルコニーに設置したパラボラアンテナの撤去請求を認める。バルコニーは区分所有法2条4項の「専有部分以外の建物部分」にあたる。
⑩ 東京地判平成4年9月22日(ナ判例): バルコニーに設置した物置の撤去請求を退ける。専有部分の売買契約書に、本件バルコニーが専有部分と記載されていること、物置設置時には、バルコニーを共用部分とする旨規定した管理規約が成立していなかったことを理由として、バルコニーが専有部分であると認める。
(ロ) 若干のコメント
a バルコニーを専有部分と認めた判例
③および⑩の判例は、バルコニーが専有部分である旨マンション分譲会社が作成した売買契約書に記載されていたことを根拠として、バルコニーが専有部分であると認めている。しかし、区分所有法によると、構造上・利用上の独立性を外形上有する建物部分が区分所有権の対象となり得るのであり(1条)、そのような建物部分の存する建物の所有者(分譲会社など)がその建物を区分所有建物とする旨の意思を表明した場合にそのような建物部分(規約共用部分を除く。)が区分所有権の対象となる。これが専有部分である(2条1項、3項)。しかし、③および⑩の判例では、バルコニーは、おそらく、構造上の独立性、利用上の独立性をともに欠いている。したがって、たとえバルコニーが専有部分である旨分譲会社が売買契約書に記載したとしても、これは専有部分とはならない筈である。升田弁護士も⑩の東京地判平成4年9月22日(ナ判例)のコメントにおいて、「バルコニーは・・・専有部分であるとはいえないものであるから、本判決の専有部分性を肯定した判断は誤りである。」と述べ、同判例を批判している(升田純、「要約 マンション判例155」、学陽書房、2009、87頁)。
しかし、次のように考える余地もないわけではない。すでに(4)ハ述べたように、判例は、いわゆる複合的建物部分について、その全体の構造上・利用上の独立性が認められると、その一部である廊下や階段室も専有部分となることと認めている。バルコニーはそれに接する居住部分を通じて廊下などに通じているのであるから、これと同様に、居住部分とバルコニーとを一体として一つの建物部分であると観念すれば、その全体を専有部分と認める余地もあるのではないだろうか。もちろん、居住部分とバルコニーとをあわせて一つの建物部分と把握しても、バルコニー部分の上部や側面は一部外気から遮断されていないから、その建物部分に構造上の独立性は認められるのか、という問題は残る。しかし、判例は、駐車場の事案では、上部の一部が外気と遮断されていない場合でも、構造上の独立性を認めている(「構造上の独立性」の項目参照)。したがって、取引通念上物的支配に適するとみられる程度にその範囲が明確であれば、このような建物部分についても構造上の独立性を認める余地がないわけではない。③の判例が、「居室部分とともにこれに附属して一体をなす専有部分としてその単独所有権を取得した」と判示していることは、このような考え方に立つことを示しているように見える。
b 管理規約の規定を理由に、バルコニーを共用部分と認めた判例
①②④⑤および⑦の判例は、管理規約の規定を根拠として、バルコニーが共用部分であると判示している。これらの内で、④は、バルコニーが規約共用部分であると判示している。しかし、他の判例は、バルコニーが本来は専有部分であり管理規約の規定により共用部分とされたのか、それとも、本来法定共用部分であり管理規約の規定は単にこれを確認したに過ぎないのかについて判示していない。バルコニーが、専有部分か共用部分かについては、上掲「新しいマンション法」72頁が判例は分かれていると述べているので、これらの判例は、管理規約の規定がバルコニーを共用部分と定めている場合には敢えてこの問題に立ち入る必要はない、と判断したものと思われる。
c 「専有部分以外の建物の部分」であることを理由として、バルコニーを共用部分と認めた判例
⑥⑧および⑨の判例は、それぞれ、バルコニーが「基本的構造部分」、「躯体」、「専有部分以外の建物の部分」であることを理由として、バルコニーが共用部分であると判示している。これは、「支柱、耐力壁、屋根(屋上)、外壁、基礎工作物等、建物全体の基本的構造部分は、建物全体を維持するため必要なもの」であり、「したがって、これらのものがたとえ専有部分の内側に存し、又は専有部分と接着していても、それは専有部分の範囲に属しないものであり、法律上当然に共用部分です。」(上掲「新しいマンション法69頁)という見解にしたがったものである。 しかし、バルコニーが共用部分とされる実質的な理由の第一は、②判例や④判例(カ判例)の判旨が指摘しているように、マンション全体さらには団地の美観を維持することにあるのではないだろうか。
ニ ピロティ、ロビー、バルコニーの特徴
管理人室や共用設備用の室とは異なり、ピロティやロビーは、区分所有者の全員若しくは一部にとり必要不可欠な部分ではない。しかし、これらは、学説上は、法定共用部分と考えられている(ピロティについて、上掲「新しいマンション法」、72頁。ピロティ、ロビーについて稲本・鎌野 上掲「コンメンタールマンション区分所有法、第2版」、32頁)。これらが法定共用部分と解される理由は、もちろん、集会所、ホール、避難通路といった機能を持つこともあろうが、より、重要なことは、これらの空間が、マンション居住者のコミュニティー形成に役立ち、またデザイン上も重要な意味を持つことではないだろうか(ピロティの目的は、実用面よりもデザイン面にあるといわれている)。ピロティーが共用部分であることを否定したウ判例では、分譲会社は、分譲時からピロティ部分を資材置場に使うことを予定しており、購入者もそこが利用可能であることを前提として購入したのではない、と認定されているが、これは、当該スペースをコミュニティー形成や同マンションの優れた外観の確保などを通じて区分所有者の利益のために使うことが予定されていなかったことを示唆しているのではないだろうか。
バルコニーの場合も、①判例(ロ判例)の判旨が指摘し、また④判例(カ判例)でも触れているように、建物全体の美観の維持が重要なのはないだろうか。 判例は、建物の基本的構造部分に属することもってバルコニーを法定共用部分と認めている理由としているが、バルコニーに看板やパラポラアンテナを設置したり物置を置いたりしても、建物の安全性が害されることはあまり考えられない。むしろ、各区分所有者が、勝手に、バルコニーを利用することを認めると、建物全体の美観が害されるので、これを共用部分としたうえで、区分所有者に専用使用権を認め、区分所有者全員の利益に反しない仕方でバルコニーを使用することを認めるべきだと判断したのではないだろうか。
要するに、 ピロティ、ロビー、バルコニーを法定共用部分として、維持管理をキチンと行い、また、その利用を制限することは、コミュニティー形成に役立ち、マンション全体の価値を高める。その結果、これは区分所有者全員の利益に資することになる。したがって、分譲時からこれらが予定されていたようなマンションでは、これらについて利用上の独立性を認めないのではないだろうか。
4 資料ーー利用上の独立性に関する判例
ここで取り上げているのは、稲本・鎌野、上掲「コンメンタールマンション区分所有法、第2版」、五十嵐徹、「マンション登記法 第3版」、日本加除出版、2006、升田純、上掲「要約 マンション判例 155」の何れかで取り上げられている判例である。利用上の独立性に関する判例を網羅している訳ではない。
イ 神戸地判昭和44年5月26日判例時報591号85頁
管理人室+管理事務所・共用設備
「[本件事務所は]、その壁面には本件建物の火災報知機、ガレージブラケット・玄関天井灯・廊下常夜灯・天井灯・山手コーポ看板灯・廊下常夜灯・階段状や電灯のスイッチ地類があり、その壁心には配電盤ボックス・貯水槽溢水警報装置・エレベーターの非常警報装置および緊急電話装置が、その壁の中には動力・電灯等の全住宅のメインスイッチボックスがそれぞれ埋め込まれており、更に玄関に通じる廊下に面した部分のガラス窓を大きくとる等して、本件建物の管理をはじめとして、外来客の応接案内、不審者の発見、郵便物の保管等の便宜のため設けられたもので、事務室に続くガラス障子で仕切られたその余の部分は専従の管理人が居住し、また、地下へ出入りする自動車を監視すべき場所として右事務室と不可分の一体をなしている。
・・・・・・
本件事務所は、壁等により区分された本件建物の部分であることのほか、その位置、構造および同所に設けられた諸設備の状況が原告ら主張のとおりであり(なお、本件事務所のうち事務室を除くその余の部分は、台所、浴室、便所の設備のある居住用建物部分ではあるが、同所を使用するには事務室を通らなければならないから構造上の区分された部分ではなく、事務室と不可分の一体をなすものである。)、本件建物の区分所有の対象となる45戸の保安、管理のため必要不可欠の建物部分であること、・・・が認められ」る。
ロ 東京高判昭和47年5月30日判例時報667号10頁
バルコニー
区分所有者の一人が、自分の専有部分に接しているバルコニーを改築して、温室とした事案。裁判所は、次のように判示して、原告(管理組合)の原状回復請求を認めた。「組合規約第七条第二項第一号によると、共同住宅の建物の躯体部分は控訴人(原告)の管理する共有物と定められていること、そしてバルコニーに該当する部分の躯体が右規定にいう共同住宅の建物の躯体部分に含まれることは当事者間に争いがないので、バルコニーは控訴人の管理する共有物ということができ、しかも組合規約第8条、第10条によれば、共有物の改築は控訴人がその目的を達成するために行う業務に属することは明らかであるから、控訴人組合の組合員がバルコニーを自由に改築することは許されず、建築協定はこれが絶対的禁止を明定し、その違反に対しては理由のいかんを問わず原状に復せしめることとしているのである。」
さらに、同判例は、建築協定がバルコニーの改築を禁止するに至った実質的理由について、次のように判示した。「第1に組合員が自由にバルコニーを改造することになれば、建物全体ひいては団地全体の美観を害するからであること、第2に本件の住宅部分及びバルコニーはいずれも鉄筋コンクリート造りで、一定以上の重量が加わると、バルコニーの存立に危険を及ぼすおそれがあること、第3に各バルコニーは隣家のバルコニーと接続していて、その間の仕切板はある程度の力を加えると容易に突き破れる構造になっているので、相互に非常の際の避難路の効力を有し、これを勝手に改造すると、その効用を損なうおそれがあること。」
ハ 最判昭和50年4月10日判例時報779号62頁(ロ判例の上告審判例)
バルコニー
「[原審の]確定した事実関係によれば、本件バルコニーは被上告人組合の管理する共有物であり」と判示し、本件バルコニーは躯体部分に属するから法定共用部分である、という原審判決を認容した。
ニ 東京地判昭和51年10月1日判例時報851号198頁
(イ) 管理人室+管理事務室・共同設備
本件では、管理人室内の一室が受付室であり、受付室を通って管理人室に出入りするという構造である。
「本件建物は、被告会社建築にかかる通称「フラットG」という鉄筋コンクリート造陸屋根7階建の共同住宅で、一階には本件管理人室及び本件車庫のほか、専用部分として被告会社に使用されている事務室、共用部分として使用されている玄関ホール、廊下、電気室、便所、洗面所、ポンプ室、階段室、エレベーター及び物入があり、二階から七階までは各階に五戸ずつの区分建物合計三〇戸がある。
本件管理人室の受付室南側壁面は、幅約1.2メートルにわたり上半分がカウンター付のガラス戸となって、本件建物に出入りする者に対する応接等に便利な構造になっており、同室には本件建物のエレベーターの非常電話器、本件建物全体の火災報知器及び一階共用部分の手元スイッチが設置されており、昭和46年秋に本件建物が完成してから同48年暮頃まで被告会社が被告石井を本件管理人室に居住させ、本件建物の管理の事務に従事させていた。
・・・・
本件管理人室が構造上の共用部分であるといいうるためには、同室が全体として、その構造、機能からみて、区分所有者全員にとって不可欠であるか、又は不可欠とまではいえなくとも、共用とされるに適当であり、かつ共用以外の用途に供されることが通常期待しえないものであることを要すると解されるところ、右認定の事実をもってしては、未だこれにあたるものということはできない。
即ち、一般にある程度の戸数を備えた共同住宅においては、居住部分をも備えた管理人室があれば、建物の管理に便利であることは当然であるが、それが不可欠なものであるとまではいえない。少なくとも、本件における程度の戸数なら専属の管理人を置かない方法による管理形態も充分考えられるし、仮に専属の管理人を置く場合でも、本件管理人室を使用しない方法による管理形態もまた容易に考えられるところである。
・・・・
また、同室が独立して住居としての用途に供しうるものであることは、前記認定事実から明らかであって、当初管理人室として作られたもので共用とされるに適当ではあっても、共用以外の用途に供されることが通常期待されえないものではなく、これを共用部分として利用するには、法第3条第2項(現4条2項)で定めるところにより共用部分とするほかはない。」
(ロ) 車庫
「近時自動車の保有がかなり一般化しているとはいえ、車庫が区分所有者にとって有用なものとはいえても、不可欠なものとはいえない。」
ニの2 東京地判昭和51年10月12日判例時報851号198頁
(イ)車庫+共用設備
「・・・本件車庫から直接本件建物の外部に出ることが可能であること及び本件車庫の車輌収容能力は、本件建物の区分所有者の数に比してごく僅かに過ぎずほとんどの区分所有者はこれを利用できないことが認められることよりすれば、本件車庫は[区分所有法]第1条にいう『独立して建物としての用途に供することができるもの』に該当するものといわなければならない。
・・・本件車庫の壁の内側付近に臭気抜きの排気管があり、又、入口付近の床に排水のマンホールが3ヶ所あることが認められるが、右事実は、本件車庫が『利用上の独立性』を有することの妨げとなるものではない。」
(ロ)倉庫+共用設備
「・・・本件倉庫は倉庫として利用しているもののその内部には本件建物の管理上必要不可欠な共用部分の電気、水道等を操作するための設備や各種配管等が設置されており、その操作をするために1日に数回も出入りしなければならないのであるから、[区分所有法]1条にいう『独立して建物としての用途に供することができるもの』には該当しないものといわなければならない。」
ホ 東京地判昭和52年12月21日判例時報895号89頁
車庫
「・・・本件車庫は、その大部分のスペースが駐車場として使用されており、現在オートバイ、自転車及び廃物が置かれている部分も、本来は駐車場として予定されていたものであり、また、本件車庫は、これから本件建物の外部に出て直接公道に出入りすることが可能であり、他方、本件建物の区分所有者は本件車庫を通過することなく本件建物から出入することができる構造となっており、さらに本件車庫の車輌収容能力は、原告らを含む本件建物の区分所有者の数に比して圧倒的に小さく、このことに端的にあらわれているように、車庫は区分所有者にとって有用ではあるが不可欠というほどのものではない、等の諸点に照らすと、本件車庫は利用上の独立性に欠けるところはない・・・」。
ヘ 東京高判昭和53年8月16日民集35巻4号815頁(チ判例、リ判例の原審判例)
(イ) 車庫+共用設備
「本件車庫が車庫として利用されていることは、当事者間に争いがなく、・・・本件車庫から直接本件建物の外部に出ることが可能であることが認められるのであり、右事実によれば、本件車庫は前記法条(区分所有法1条(引用者による注記))にいう独立した建物としての用途に供することができるものに該当するというべきである。」
なお、判例は、これに続いて、臭気抜きの配管、マンホールが車庫内にあることは、本件車庫が独立して建物としての用途に供しうるものであることを否定するものではないと判示している。
(ロ) 倉庫+共用設備
「本件倉庫は本件建物の他の部分と壁及び扉をもって区画されてはいるが、その内部には本件建物の維持管理上必要不可欠な電気、水道等を操作するための配電盤、各種配管等の共用設備が設置されており、その操作のために管理人が一日数回も出入りしなければならないというのであるから、少なくとも右共用部分が存在する部分及びその操作及び維持管理のために必要な部分は、区分所有の対象となるべき部分ではなく、本件建物の区分所有者全員のための共用部分たるべき部分にあたるというべきである。・・・」
ト 大阪高判昭和55年2月29日判例タイムズ421号90頁
車庫+共用設備
「[本件地下車庫]の人専用の出入口は事務所ないし階段室を通って全専有部分に通ずるものであり、本件車庫の構造規模からみて自動車の収容可能台数は6台に及び区分所有者数(26戸)の2割強に当たり、それが1,2台に過ぎない個人用のものとはいえないし、近時における激増した自動車の保有、利用状況、駐停車状況に照らすと、マンション所有者にとって車庫は必須のものというべく、このような点から考えると、本件車庫は区分所有者の需要に応じるため設置されたものといわねばならない。」 判例は、さらに、同車庫内に各種の共用設備が設置されており、その維持管理が必要である旨判示し、その上で、「本件車庫は建物の全体的設計の上からみて構造上本件建物の専有部分の全所有者によって共同に利用されるように作られている・・・」と判示した。
チ 最判昭和56年6月18日民集35巻4号798頁(ヘ判例の(イ)に対する上告審判例)
車庫+共用設備。
同判例は、構造上の独立性の認定基準について判示し(これについては、「構造上の独立性」の項目参照)、それに次いで、利用上の独立性の認定基準について次のように判示している。「[構造上の独立性の認められる]構造を有し、かつ、①それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分は、②そのうちの一部に他の区分所有者らの共用に供される設備が設置され、このような共用設備の設置場所としての意味ないし機能を一部帯有しているようなものであっても、③右の共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、④その余の部分をもって独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができ、かつ、他の区分所有者らによる右共用設備の利用、管理によって右の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがなく、反面、⑤かかる使用によって共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合には、⑥なお建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権の目的となりうる・・・。」(①から⑥の数字は引用者が挿入した)。
そのような基準を本件事案に適用し、最高裁は、本件における利用上の独立性について、次のように判示した。「・・・ (4)本件車庫は、車庫として利用され、右利用にあたっては、本件車庫から本件建物の外部に直接出ることが可能である、(5)本件車庫の内側付近2か所に臭気抜きの排気管が取りつけられており、また、出入口付近の床の3か所に排水用のマンホールが設置されており、右排水管及びマンホールは、いずれも本件建物の共用設備であるが、本件車庫のうちのきわめて僅かな部分を占めるにすぎず、かつ、これらが本件車庫内に存在するために本件建物の管理人が日常車庫に出入りする必要が生ずるわけでもない・・・」という原審認定のもとでは、「本件車庫が・・・それ自体として独立の建物としての用途に供することができる建物部分であり、建物の専有部分として区分所有権の目的となるものとした原審の判断は正当」である。
リ 最判昭和56年6月18日判例時報1009号63頁(ヘ判例の(ロ)に対する上告審判例)
倉庫+共用設備。
原審は、「(1)本件倉庫は、壁及び扉などにより区分された本件建物の部分であるが、ブロックの壁で仕切られた第1倉庫及び第2倉庫の各部分から成り、いずれの部分にも本件車庫、電気室、1階正面のロビー等に通ずる通路部分への出入口がある、(2)第1倉庫には14区画、第2倉庫には3区画の物置がブロック壁に接して並置され、本件建物の区分所有者の一部の者に利用されている、(3)第1倉庫の床には汚水及び雑排水の各マンホールがあり、また、第1倉庫の内側の壁の一部には本件建物の共用設備である電気のスイッチ、積算電力計の配電盤並びに換気、汚水処理及び揚水ポンプなどの動力系統のスイッチがはめこまれており、本件建物の管理人が1日3回ほど入庫しなければならないが、第2倉庫には配電盤もマンホールもない、(4)第1、第2倉庫の各天井の高さはいずれも約2.89メートルであるが、床から約2.05メートルの高さのいたるところに直径約15センチメートルから3センチメートルまでの大小の電気、水道等のパイプが通っており、右パイプは、物置の上部にある部分は金網で覆われているが、その他の部分は露出したままになっている、」という事実を確定し、その事実関係の下では、第1、第2倉庫ともに、区分所有者全員の共用部分にあたるものと認めた。
最高裁は、ヘ判例における利用上の独立性に関する一般論を述べた後に、「原審が認定した前記事実によれば、第2倉庫は、構造上他の部分と区分され、それ自体として独立の建物としての用途に供することができる外形を有する建物部分であるが、他の区分所有者らの共用に供される設備として、床から約2.05メートルの高さの部分に電気、水道等のパイプが設置されているというにすぎず、右共用設備の利用、管理によって第2倉庫の排他的使用に格別の制限ないし障害が生ずるかどうかの点についてはなんら明確にされていないから、原審の認定した事実のみでは、少なくとも第2倉庫についてはそれが建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権の目的となることを否定することはできない・・・」と判示し、原審判決を破棄差し戻しした。なお、本件では、第1、第2倉庫が全体として1戸の区分建物として所有権保存登記がされており、原告は、その抹消登記手続を請求しており、1審はこの請求を認め、原審はこれに対する控訴を棄却していた。それ故、最高裁は、第1倉庫に関する部分を含めて破棄差し戻しをしなければならなかったのではないか、といわれている(本判例に対する判例時報1009号のコメント)。
ヌ 最判昭和56年7月17日(ト判例に対する上告審判例)民集35巻5号977頁
車庫+共用設備。
原審は、「本件車庫の構造規模からみて自動車の収容台数も6台に及び区分所有者数(26戸)の2割強に当たり、・・・近時における激増した自動車の保有、利用状況、駐停車状況に照らすと、マンション居住者にとって車庫は必須なものというべく、このような点から考えると本件車庫は区分所有者の需要に応じるため設置されたものといわなければならない。しかも、本件車庫に天井には、本件建物全体の用に供する配線、配管類がはりめぐらされており、その地下には同じく全体の用に供するし尿浄化槽が設置されており、車庫の床にはこれに通ずるマンホール三個があり、また、排水ポンプの故障の際の予備の手動ポンプが設置されているのであって、右浄化槽等の点検、清浄、故障修理のため随時専門業者が本件車庫内に立入、作業をなすことが当初から予定され、いわば機械室をかねたような構造になっている。」という事実を認定し、「本件車庫は建物の全体的設計からみて構造上本件建物の専有部分の全所有者によって共同に利用されているように作られている・・」と判示した。
それに対し、最高裁は、「原審が認定した前記事実によれば、本件車庫は、構造上他の部分と区分され、それ自体として独立の建物としての用途に供することができる建物部分であるが、他の区分所有者らの共用に供される設備として、・・・、天井には配管類が取り付けられ、床下にはし尿浄化槽と受水槽があり、床面には床下に通ずるマンホールが設けられ、本件車庫内に手動ポンプが設置されていて、右浄化槽等の点検、清掃、故障修理のため随時専門業者が本件車庫内に立ち入って作業をすることが予定されているというにすぎず、右共用設備の利用、管理によって本件車庫の排他的使用に格別の制限ないし障害が生ずるかどうかの点についてはなんら明確にされていないし、マンション内の車庫は車庫であるという理由によって区分所有者らの共用部分であると認める論拠に乏しいから、原審の認定した事実のみでは、本件車庫が建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有の目的となることを否定することはできない・・」と判示し、原審判決を破棄差し戻しした。
ル 東京地判昭和57年1月27日判例時報1050号88頁
(イ) 管理人室+共用設備
判例は、「本件管理人室は、独立の出入口を有し、内部構造は住宅として独立に利用しうるものとなっているので、利用上の独立性を有することも明らかである。」と判示し、次いで、同室内に共用設備が設置されていたことは以下の理由により利用上の独立性を否定する根拠にはならないと判示する。
管理人室には、本件建物建設の当初から、地下揚水ポンプ警報機、火災警報集中受信板、エレベーターの緊急電話装置、本件建物一階部分の電話配線板が取り付けれれていたが、「[これらの]共用部分たる諸設備は、本件管理人室の小部分を占めるにとどまっていたものであり、本件建物の建設当初から移動不可能なものとして固定的に取り付けられていたわけではなく、その後、本件管理人室の西側隣りに管理人詰所が設置されたのに伴い、右諸設備は、現在はほとんど利用されていない電話配線板を除いて、同所に移設されたことを考慮すると、本件管理人室に、従前、諸装置が取り付けられていたこと及び現在も電話配線板が取り付けられていることをもって、管理人室の利用上の独立性が妨げられるものということはできない」。
(ロ) 第1車庫+共用設備
裁判所は、「本件第1車庫が車庫及び倉庫として利用されていることは当事者間に争いがなく、また・・・本件第1車庫からは共用部分たるスロープを通って区道に出ることができることが認められ・・・本件第1車庫は利用上の独立性を有することが明らかである」と判示し、それに次いで、「本件第1車庫の床下には、共用部分である排水槽及び受水槽が埋設されていて、床には右各水槽の入口にあたるマンホールのほか、排水ポンプが設置されており、天井には、受水管及び排水管が張りめぐらされており・・・前記諸設備の点検、維持、管理のために本件第1車庫を一日約2回通行する」ということは、第1車庫の利用上の独立性を妨げるものではない、と判示した。
ヲ 東京高判昭和60年4月30日判例時報1156号74頁
駐車場+共用設備。
本件地下駐車場の接してポンプ室、電気室2、高圧受電室、エレベーター室、階段室などの共用部分が設置されている。また、本件駐車場内には、オイルポンプ置場、電話端子盤、配電盤が設けられている。さらに、駐車場床下には、受水槽、涌水槽、雑排水槽、オイル貯留槽、浄化槽が埋設されており、これらの維持、管理等のためには本件駐車場内のマンホールを開いて、点検、清掃等の作業を行うことが必要である。ポンプ室等の共用部分、オイルポンプ置場等、マンホールに到達するためには、本件駐車場を通らなければならない。このような事案について、裁判所は、最判昭和56年6月18日(チ判例)の判示した一般論を述べた後、「ここに等しく排他的利用といっても、当該建物部分が居住目的のものであるか駐車場目的のものであるかなどによって著しく異なるのであるから、以上の利用上の独立性の有無についても、当該建物部分の客観的な構造上の用途ないし利用目的に照らして判断されるべきである。」と判示したうえで、本件においては、「本件駐車場の排他的利用が右共用部分の清掃、点検等に格別の障害を与えるものとはいえず、また、右マンホールの存在又はその使用が本件駐車場の駐車場としての排他的使用を妨げるものともいえない。・・・本件駐車場は、これら共用設備の設置場所又は共用部分への通路としての機能を一部帯有しているけれども、未だ駐車場としての利用上の独立性を有しないものということはでき」ないと判示した。
ワ 東京地判昭和60年7月26日判例時報1219号90頁
(イ) 101号室(管理事務所)
床面積12.75平方メートルの事務所様構造の建物部分。「101号室は・・・本件建物の管理の用に供されてきているもので、その床面積、構造からみても管理事務に適当な形態を有しており、内部には、警報装置等各種共用設備が設置されているというのであるから(・・・)、その主たる利用は本件建物の管理の用に供することになるというべきであり、その意味で101号室は管理という本件建物居住者の全体の用に供されるべきものであって利用上の独立性がなく・・・」
(ロ) 102号室(管理人室)
「102号室は、床面積25.02平方メートルで、本件建物の他の部分とは壁、天井等により明瞭に区別された三畳、四畳半の二部屋等からなる建物部分で、出入口は一つで直接外部に通じており、被告会社が本件建物を管理していた当時雇っていた管理人が宿泊用に利用していたものであり、管理組合が管理をするようになって以後は利用されておらず、特段の共用設備も存しない」という事案において、「102号室は構造上独立していることは明らかであり、床面積等からして人が独立して利用するに十分な構造を有しており、現在までの利用状況も管理人が宿泊のため利用しているだけであって特段の共用設備もない」という理由で利用上の独立性を認めた。
カ 横浜地判昭和60年9月26日判例タイムズ584号52頁
バルコニー
「建物区分所有法においては、数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又は一部の共用に供されるべき建物の部分が区分所有法の目的とならない建物の部分すなわち共用部分と定められているところ、本件バルコニーが非常の時において避難用通路に供されることが予定されているとしても、その主たる使用目的は、これに接続する各戸の使用者の専用に供されるべきもので、共用に供されるべき建物部分ということはできない。しかし、同法によると、右定めにより共用部分に含まれない建物の部分であっても、規約により共用部分とすることができる旨定められている(第3条)ところ、規約においては、建物の躯体、屋根、外周壁が管理共有物と定められていること、協定において、共有物の修理等として、建物の躯体、屋根、外周壁の修理は、当該棟の組合員で協議して実施し、その費用は共同で負担する旨、及び建物の外周壁、バルコニー等の鉄部塗装は、団地の調和を損なわない範囲内において、一棟同一色彩として、当該棟の組合員で協議して実施し、その費用は共同で負担する旨定められていることの各事実は弁論の全趣旨に照らしこれを認めることができる。
そこで、右規約及び協定の定め、並びに前記認定のバルコニーの構造に基づいて判断すると次のとおり解せられる。
すなわち、規約及び協定においては、建物本体が全戸一体をなしているところから、その機能を維持し、外観を統一して美観を保持するため、建物本体を構成する、躯体、屋根、外周を共有物とし、組合が管理することと定めているものと解されるところ、本件バルコニーはその構造においても、また、機能、外観維持のための管理の点(本件バルコニーは、腰高程度の鉄柵、コンクリート側壁のほかには外部空間と隔てるものはなく、外周に限らず、その床面も風雨に曝される状態にあるばかりでなく、直下の階のバルコニーの庇をなしているのであって、その維持管理は、建物全体の管理として行う必要がある)点において、建物躯体と区別すべき点はなく、規約、協定の右規定も、このような趣旨で本件バルコニーは躯体に含まれるものと定めていると解すべきである。このことは、被告二木が主張するように、本件バルコニーが居住者の専用的な使用に供せられていることによって異なるものではない。
以上のとおりであるから、本件バルコニーは、規約の定めるところにより、共用物に属するものというべきである。」
ヨ 東京地判昭和63年11月10日判例時報1323号92頁
管理人室+管理事務室・共用設備。
裁判所は、「本件管理人室には、玄関寄りに受付用小窓が設置され、室内に自動火災報知器及び防扉作動表示板が設置されており、区分建物七十数戸がある本件マンションの建築分譲当初から管理人室として使用されてきたというのであり、もともと管理人室として設計、建築されたことは明らかである。また、本件管理人室には専用の出入口があり、右防災用設備も本件管理人室の西側壁の僅かな一部分を占めているにすぎず、これらは他の場所へ移設することもできると目され、本件管理人室には日常生活に必要なガス、水道等も備わっていて、本件マンションの管理以外にも使用できると認められ、さらに、本件マンションを分譲した訴外会社が本件管理人室を区分して、自己の所有物件として所有権保存登記をなし、本件管理人室の使用価値、交換価値を把握してきた・・・」という事情を認定した上で、「本件管理人室は、本件マンションの区分所有者にとって必要なものではあるが、区分所有者全員にとって不可欠のものとか、管理人室以外の用途に供することが期待され得ないものとはいえず、独立して建物としての用途に供することができる」と判示し、本件管理人室を区分所有法上の専有部分と認めた。
なお、本判例では、「管理人室」は、本項目でいる「管理事務室」と「管理人室」とを兼ねている。
タ 東京地判平成元年3月8日判例タイムズ715号239頁(本判決は、ツ判例(東京高判平成2年6月25日)により取り消された)
管理人室。
「本件管理人室は和室2間、台所、便所、風呂、廊下、玄関出入口からなる37.35平方メートルの建物部分であり、本件マンションの一階の南西側に位置し、各区分所有者のための玄関、ロビー、エレベーター2基及び階段に接していること、本件管理人室の南西側に隣接して床面積8.28平方メートルの本件管理事務室があり・・・本件管理事務室は本件マンションに出入りする人の応対や監視ができるようになっているとともに、同室内には火災、溢水等の警報装置、配電盤、点消灯装置などの共用設備が設置されていること、本件管理人室と本件管理事務室との床には段差はないが、その境界である・・・レ点とソ点との間ににガラス引戸があり、・・・レ点とタ点との間は壁で仕切られていること」は当事者間に争いがなく、また、「本件管理人室は・・・ト点とチ点間に鉄製の玄関ドアがあり、カ点とヨ点間に窓があり、そして本件管理事務所との境に・・・ガラス引戸(・・・)がある外はその周囲が壁で囲まれ、右各壁は床及び天井に固定されていること、・・・前記の・・・鉄製ドアは、施錠可能な本件管理人室専用のドアであり、ここから管理事務室を利用せずとも自由に外部と出入りできること、本件管理人室には共用設備はなんら設置されていないこと」を認定した。
その上で、裁判所は、「右当事者間に争いのない事実及び右認定事実によれば、本件管理人室は、隔壁(仕切り壁)、階層(床及び天井)等により独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断され、その範囲が明確であり、かつ社会観念上それ自体として独立の建物としての用途(本件管理人室の場合は居室または事務室)に供することができるような外形を有していることが認められ、構造上及び利用上の独立性を有していることは明らか」と判示した。
これに対し、原告は、「本件マンションは24時間の管理体制をとる必要があり、そのためには管理人が睡眠、休憩、更衣をする場所や管理関係の書類等を保管する場所が必要であるにもかかわらず、本件管理事務室は約8.28平方メートルの広さしかなく、睡眠、休憩、更衣をする場所や管理関係の書類等を保管する場所はもちろん便所さえないから、本件管理人室を本件管理事務室と不可分一体のものとして利用する必要がある」と主張した。
しかし、裁判所は、「本件マンションは108戸の専有部分(住宅)を包含する比較的規模の大きいマンションであることは当事者間に争いがなく、したがってこれを管理するために管理業務に専念する管理人を常駐させる必要性が高いとはいえても、そのために本件管理人室とくに和室、台所、便所が配電盤や警報装置等のような共用設備と同視しうるほどに本件管理事務室と不可分一体の関係にあるものと認めることはできない」と判示し、原告の主張を退けた。
レ 東京地判平成元年10月19日判例時報1355号102頁
(イ) 管理事務室。
「(1)本件物件は、シャトー三田の玄関脇に位置し、前面の壁面はガラスでできており、その一部に窓口が設けられていて、外部からシャトー三田の構内への人や車の出入りないし建物内への人の出入りを監視し、あるいはシャトー三田への訪問者の応対をし易い構造となっていること、(2)内玄関側の壁面の一部には郵便物受箱が付設され、室内には火災報知器、ガス警報器、館内放送設備等が設置されていること、(3)床面積は27.21平方メートルにすぎず、全体が居住部分のない事務所の形態をしていることが認められる。以上の位置位関係及び構造に照らすと、本件物件は、シャトー三田の管理の用に供するために設置されたものであることが明らかである。しかも、シャトー三田が94戸という多数の住戸を有する大型の集合住宅であることを考慮すれば、本件物件は、受付管理室として不可欠なものということができる。したがって、本件物件は、利用上の独立性を欠」く。
(ロ) 倉庫。
地下一階の倉庫3室および5階の倉庫は、いずれも、収納場所としての性質上利用上の独立性がある、とされた。
(ハ) 自家発電室、バッテリー室。
「いずれも、自家発電装置の設置、保管のためのものであるが、右自家発電装置は緊急時に全区分所有者へ電気を供給するためのものであり、右各室は他の用途に使用することは予測しがたいから、いずれも利用上の独立性を欠く・・」。
(ニ) メーター室。
「狭隘な空間に共用設備である区分所有者らに対する給水、給湯用のパイプ、バルブ、メーター等が固定収納され純然たる機械室の趣を呈し、他の用途に使用することは予測しがたいから、利用上の独立性を欠く・・」。
(ホ) ゲストルーム5室、茶室、廊下及び階段室からなる建物部分
「それらの部分が区分所有者にとって必要不可欠のものともいえないから(なお、右廊下、階段室は専ら右ゲストルーム、茶室への出入りの用に供される形態となっている。)、利用上の独立性がある・・」
(ヘ) 駐車場+共用設備
「本件駐車場の天井の一部には共用設備である電力、給排水、給湯、空調等の露出の配管が設置され、一部の柱に消火設備が付設されており、これらの設備の点検、補修等の必要性はあるが、しかし、そのために本件駐車場の使用に格別の障害が生じるとはいいがたく、他方、本件駐車場を駐車場として使用することによって区分所有者らが右設備を保存、利用するに格別の支障もないことも明らかである。また、原告らは庭園、ゴミ置き場、自家発電室、焼却室に至る通路としての駐車場の必要性を主張するが、本件駐車場は構造上開口部の多い形態となっており、仮にこれを駐車場として使用したからといって右通路としての機能が果たせない訳ではなく、しかも、通路として使用することがあったとしても本件駐車場の全体からすれば、それに要する部分はごく一部に過ぎないことが明らかである。したがって、本件駐車場に利用上の独立性がないということはできない。」
(ト) 1階事務所と機材室
原告は、1階事務所は2階管理室と内部の専用階段で結ばれ、一体となったものである、と主張したが、裁判所は、1階事務所が「2階受付管理室と一体として使用しなければならない事情は認めがたい・・」と判示した。
また、機材室についても、原告は、機材室も1階事務所、2階管理室と一体となったものであり、仮にそうでないにしても、本件マンションの全体のための電話交換機設置のための機械室であり、法定共用部分にあたる、と主張した。しかし、裁判所は、機械室は「区分所有者らに不可欠のものということはできない」から、「利用上の独立性がないとはいえない。」と判示した。
(チ) トランクルーム+共用設備
「トランクルームについては共用の施設でなければならない理由はないから、利用上の独立性があることに疑問の余地はない(なお、トランクルーム内には共用設備であり電力、消火栓のための配管等があるが、そのためにトランクルームの利用に支障が生じたり、逆にトランクルームの利用により右共用設備の保存等に影響が生じる等の事情は認めがたい。)」。
(リ) 電気室、休憩室、倉庫2室からなる建物部分
これらは「一体として変電設備、ボイラー、空調・排水・揚水用のポンプ、受水槽等を設置、保管するためのものであるが、右設備は全区分所有者へ電気等を供給するためのものであり、右各室は他の用途に使用することは予測しがたいから、いずれも利用上の独立性を欠くものというべきである。」
(ヌ) 2階のゲストルーム5室、大ホール、廊下、ウエイティングルームからなる建物部分
上記建物部分は、「その位置関係等からして他の区分所有者等がそれぞれの専有部分若しくは共用部分を使用するについて格別の支障が生ずるわけではない。なお、原告らは大ホールは全区分所有者の会合、冠婚葬祭等の用に供するものであり、利用上の独立性を欠く旨主張するが、右のような会合等の場所が区分所有者らに必要不可欠のものということはできない。したがって、右部分について利用上の独立性がないとはいえない。」
(ル) 1階ロビー
「1階ロビー部分は、玄関ホールから引き続く位置関係にあり、全区分所有者や来訪者の待合等に適していることは事実であるが、右のようなスペースが全区分所有者にとって不可欠のものということはできないし、しかも、右部分が各区分所有者においてそれぞれの専有部分若しくは共用部分を使用するについて格別の障害となる状況もないのであるから、この部分についても利用上の独立性がないとはいえない。」
ソ 東京地判平成2年1月30日判例時報1370号83頁
駐車場+共用設備
「本件駐車場部分には、そのごく一部に共用設備たる配管等が設置されているものの、その点検等のために日常的に本件駐車場に立ち入る必要はなく、他方、本件駐車場部分の前面開口部は、本件駐車場部分の専用の出入口として外部に通じており、本件マンションの他の区分所有者の住居部分の出入口(エントランス)は別に存在していて、本件駐車場の出入口を利用する必要はなく、また住居部分に通じる構造にもなっていない・・・。」したがって、本件駐車場部分も利用上の独立性を有するものと認めて差し支えない。」
ツ 東京高判平成2年6月25日判例タイムズ755号207頁(タ判例の控訴審判決)
管理人室
「4・・・本件マンションは、延床面積が9000平方メートル以上で、108戸の居宅(専有部分)を有する比較的規模の大きなマンションであるところ、この種マンションにおいては、区分所有者の生活関係の円滑とその生活環境の維持保全とを図るため、管理乗務に専念する管理人を置き、玄関、ロビー、廊下等の共用部分の清掃、ごみの処理、不在者に対する郵便物や荷物の保管、各種法令に基づく設備の保守点検に関する事務、来訪者との応対、不審者立ち入りの警戒、警報装置の監視等の多岐にわたる管理業務の遂行に当たらせる必要があると考えられる。本件マンションにおいては、当初から右のような管理体制がとられており、本件管理事務室がそのために管理人を常駐させる場所として造られたものであることは明らかである(本件管理事務室が共用部分であることは、当事者間に争いがない)。
ところが・・・本件管理事務室には、日中だけにせよ管理人が常駐するのであれば不可欠の設備というべき便所がないだけでなく(・・・本件管理人室内の便所以外に使用し得る適当な便所があるとは認めがたい。)、床面積が約8.2平方メートルと狭隘で、その構造上人目を避ける場所もないから、休憩、着替えをするにも適しないし、管理関係の書類等を保管する上でも支障がある。したがって、本件管理人室を全く使用することなく、本件管理事務室だけを使用して管理をしたのでは、本件マンションの管理事務を適切かつ円滑に遂行することは困難であり、本件管理人室を専有部分として特定の者の所有に帰属させた場合には、本件マンションの区分所有者の生活関係に支障が生じるおそれがある、といわなければならない。
5 次に、本件管理人室が独立した建物として用途に供することができるものかどうかを検討するに、被控訴人らは、本件管理人室はそれ自体として1戸の住居又は事務所として利用し、かつ、取引の対象とすることができると主張する。なるほど、・・・本件管理人室は、和室2間のほか台所、便所、風呂場も設けられているから、居住の用に供することができないではないが、他方、・・・本件管理人室は、店舗、駐車場、倉庫等のある本件マンション1階(1階には他に住居部分は存在しない。)に位置し、共用部分である玄関、ロビー、エレベーター、階段及び本件管理事務室に接していて、しかも、本件管理事務室との間はもともとガラス引戸を通って自由に行き来することができるため、プライバシーを保つことも難しい構造になっていることにかんがみると、本件管理人室は、通常の住居として利用するには適しないものであり、住居として一般の取引の対象とするのは困難なものであると判断される。また、右のような本件管理人室の位置、構造や・・・本件管理人室内の設備(応接に便利な洋室はなく、電話など管理に必要な設備もない)にかんがみると、事務所としての用途も限定的なものにならざるを得ず、・・・これを一般的に事務所として利用し、取引の対象とすることもまた困難であると判断される。そのほか、本件管理人室は、その構造上、店舗、倉庫など、住居又は事務所以外の独立した建物としての用途に供するにも適していないと考えられる。・・・
6 更に、・・・本件管理人室は、当初から本件管理事務室と一体として本件マンション全体の管理に使われるように設計・建築されたことがうかがわれるのであり・・・実際にも、昭和59年6月30日以前には、被控訴人東方商事は、本件管理事務室において管理に従事する者の用便、休憩、着替え等の場所として、また、管理関係の書類等の保管場所として、本件管理人室を利用していたのであって、これらの事実に前記の本件管理人室の位置、構造、設備をも併せ考えると、本件管理事務室と一体として本件マンション全体の管理に使われるのが、本件管理人室の最も自然な用途である、というべきである。
7 以上4ないし6で検討したところによれば、本件管理人室は、本件マンションの区分所有者の利益のために必要な存在であるという性質を有しており、また、それ自体として住居、事務所その他の独立した建物としての用途に供するには適しておらず、むしろ、本件管理事務室と一体として本件マンション全体の管理に使われるのがその最も自然な用途なのであるから、本件管理人室は利用上の独立性を有していないとみとめるのが相当である。」
ネ 東京地判平成3年2月26日判例タイムズ768号155頁
ピロティーーー駐車場+専有部分への通路
「1 本件マンションは、北側と南側の二つの構造部分から成っており、右2つの構造部分の間には、玄関ホール、階段等があるほか、吹き抜け(・・・)となっている。
南側の部分は、一階から四階までが全部住居部分となっている。他方、北側の部分は、二階から四階までは居住部分であるが、一階には・・・、北側の二つの入口の間に存在する障壁、前記玄関ホール・階段等の部分、東西に設けられた高さ約1メートルのコンクリート壁及び別紙図面AないしHに存在する柱によって囲まれた建物内空間部分(本件ピロティー)が存在する。
2 別紙図面の北側の道路と本件ピロティーとの間には、二つの入口(スロープ)が存在するが、右二つの入口のほかには、本件マンションの出入口はなく、かつ、右の入口から居住部分に行くためには、本件ピロティーを通って前記の玄関ホール・階段に入るほかはない。そして、本件ピロティーの床面は・・・幅90センチメートルにわたって色違いのタイルが張られている。しかし、右色違いのタイル部分と他のピロティー部分とを区別する物理的な構造物は存在しない。
3 被告は、本件ピロティー内を屋内駐車場(5台分)として独占的に使用してきたが、駐車場としての区画部分を示す物理的な構造物は全く存在しない。
二 右事実によれば、本件ピロティーは、本件マンションの居住者が出入りするために不可欠な通路部分を含んでいるものと認められるから、右通路部分は、構造上区分所有者全員の共用に供せられるべき建物部分に該当するというべきである。」
これに対し、被告は、「本件マンションの居住者のために本件ピロティー全体が通路として必要不可欠なものであるとはいい切れず、実際にも本件マンションを建設するに当たり、通路部分を示すものとして、・・・色違いのタイルを張っていた」と主張した。
これに対し、裁判所は、次のように判示して、被告のこの主張を退けた。「区分所有権の対象となるためには、その部分について建物の構造部分による一定程度の遮断性が要求されるべきところ、本件ピロティーは、前記のような吹き抜け構造と成っているうえに、前記色違いのタイル部分と他の部分との間には、これを区別する何らの物理的な構造物は存在せず、また実際の利用状況を考えても、本件ピロティーの広さ、二つの入口と玄関ホール・階段との位置関係からみて、本件ピロティーのほぼ全域が、本件マンションの居住者の用に供されているものとみることができる。したがって、被告が駐車場として使用してきた本件ピロティー部分が、独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されているとは到底認め難いところである。」
ナ 東京地判平成4年9月22日判例時報1468号111頁
バルコニー
被告が、本件バルコニーに、本件マンション604号室(本件建物)の住戸部分から約85センチィメートルの箇所に高さ約40センチメートルのブロックを、長さ約510センチメートルにわたって積み、その上に高さ約132センチメートル、幅約85センチメートルのアルミサッシのガラス戸6枚を設置し、右ガラス戸と居室との間に木製の合板を張り、天井部分にはベニヤ板を張った(本件工作物)。管理組合から被告に対して本件工作物の撤去を請求。
「(1)・・・本件バルコニーについて検討するに、被告が物置として利用していることから利用上の独立性の点はともかく、構造上の独立性という点において、今日の考え方からすると専有部分とは言い難い面がある。
(2)しかし、本件建物が売買された昭和50年当時には、まだ専有部分と共用部分との区別が必ずしも確立されて居らず、その区分もあいまいであったといわざるを得ない上、・・・本件マンションの販売パンフレットでは、本件バルコニーは専有面積から除かれているが、売買契約書の物件の表示には専有部分と表示されていることから、昭和50年6月14日の旭交易と大沢間の売買契約において、本件バルコニーは、専有部分として売買されたといわざるを得ず、本件バルコニーは専有部分といわざるを得ない。」
本判例では、原告管理組合は、「外界との仕切壁は存在せず天井もなく、バルコニーの周囲にある壁は外壁となっている」と主張したが、判旨はこれについて認定していない。したがって、判例が、構造上の独立性を認め難いと判示した理由は明確ではない。しかし、バルコニーであるから、上部および側面は、かなりの程度、外界に開いており、それ故、構造上の要件は広く解するとしても、これを認めることは難しかったものと思われる。また、利用上の独立性については、判例が、バルコニーが物置として使われていることを理由としてこれを認めているが、バルコニーは、通常、マンション等の廊下に直接通じる出入口を有しない。すなわち、これは利用上の独立性を有しないものといえよう。
なお、本件では、バルコニーを共用部分とする旨定めた管理規約の設定前に、被告が、本件工作物を本件バルコニーに設置しているので、本件バルコニーが規約共用部分であることを前提として物置の撤去の主張することも認められなかった。
ラ 最判平成5年2月12日民集47巻393頁(タ判例、ツ判例の最高裁判例)
管理人室
本件マンションの規模や管理の仕組みについては、ツ判例参照。
最高裁は、次のように判示し、本件管理人室の利用上の独立性を否定し、原判決を認容した。「本件マンションは、比較的規模が大きく、居宅の専有部分が大部分を占めており、したがって、本件マンションにおいては、区分所有者の居住生活を円滑にし、その環境の維持保全を図るため、その業務に当たる管理人を常駐させ、多岐にわたる管理業務の遂行に当たらせる必要があるというべきところ、本件マンションの玄関に接する共用部分である管理事務室のみでは、管理人を常駐させてその業務を適切かつ円滑に遂行させることが困難であることは右認定事実から明らかであるから、本件管理人室は管理事務室と合わせて一体として利用することが予定されていたものというべきであり、両室は機能的にこれを分離することができないものといわなければならない。そうすると、本件管理人室には、構造上の独立性があるにしても、利用上の独立性はないというべきであり・・・。」
ム 東京地判平成5年9月30日判例タイムズ874号202頁
(イ) 駐車場+共用設備・通路
「本件駐車場内には分電盤やマンホール等の設備が存し、これらは区分所有者らの共用に供されるものであり、更に、本件駐車場の一部にはごみ用ポリバケツ置場があり、また、本件マンションの居住者が中庭に行くためには通常は本件駐車場を通らざるを得ない。しかし、①右共用施設部分は本件駐車場のうちのごくわずかな部分を占めるに過ぎず、その余の部分は排他的使用に供され得るものであり、②また、本件マンションの居住者がごみを置きに行きあるいは中庭に行くためには本件駐車場を通るであろうが、それは長時間にわたるものではなく、したがって、そのような通行の負担があるからといって本件駐車場が駐車場としての排他的使用を格別制限されるわけでもないのである。
(三)そうすると、本件駐車場は、専有部分として区分所有権の対象となり得るものと解するのが相当・・。」
(ロ)管理人の居室
「本件居室は、本件マンション一階の管理事務所に隣接して設けられているが、本件居室には廊下に通ずる固有の出入口はなく、右管理事務所を通って廊下に出る構造となっている。・・・
現在、本件居室は、本件マンションの管理人夫婦の居宅として使用されており、右管理人は、被告会社の関連会社の使用人である。・・・
前認定の通り、本件居室は廊下への固有の出入口がなく、廊下へ出るためには隣接する管理事務所(規約共用部分である)を通らざるを得ない。本件居室は、その構造上、管理事務所と一体となって使用されることが予定されているものということができる。
そうとすると、本件居室は、たとえ法1条にいう構造上区分された建物部分にあたるとしても、独立して建物としての用途に供することができる部分にはあたらないというべきであって、・・・」
ウ 神戸地判平成9年3月26日判例タイムズ947号273頁
ピロティーー資材置場+自転車置場等
「二 ・・・
2 本件マンションの1階部分は、居住者が出入りのために利用する北西部の玄関に続くロビー部分と本件係争部分に分かれており、ロビー部分には住民のための郵便受けが設置され、2階に出入りする階段に続いている。本件係争部分は、いわゆるピロティーであって、8本の脚柱のある空間部分であり、東部、南部には壁面がなく、西部分にはその北側半分程度にコンクリート製の壁面があり、北部の内、ロビー部分と接している西側部分にはコンクリート製の隔壁があり、鉄製の扉も設置されている。・・・
4 本件マンションの分譲に当たって、各戸の購入者に本件係争部分が共用部分であるとの説明はされておらず、また、区分所有者が専有部分を売却する場合にも、本件係争部分を共有部分として広告することもなかった。
三 以上の認定事実によれば、本件マンションの建築分譲当初、区分所有者にとって、その専有部分の所有、利用に必要である本件マンションの構造部分としては、玄関とそれに続く郵便受けの設置されたロビー部分、階段、廊下、電気室、機械室等であり、本件係争部分は、専有部分の所有、利用にとって不可欠な部分ではなかったというべきである。
本件係争部分は、その構造上、脚柱のみの開放部分が多いが、北部の西側ロビーに接する部分にはコンクリート製の隔壁が設けられ、西部の北側半分もコンクリート製の壁面が設置されており、ロビー部分はタイル張りであるのに対し、本件係争部分は、舗装されていなかったのであって、ロビー部分と本件係争部分との境界は明確であり、住民が二階以上の専有部分への出入りのために自由に立ち入ることができる構造ではなく、一応独立の物的支配が可能な程度に他から遮断されているものといえる。
被告は、当初から本件係争部分を資材置場として利用する意図で、自己の専有部分として留保し、実際にも資材置場として利用してきたのであり、本件係争部分を共用部分とする意図は全くなく、分譲の際にもそのような説明をしておらず、分譲価格の決定にあたっても本件係争部分の利用の対価を反映させなかったものと考えられる。本件マンションの各戸の分譲を受けた区分所有者も、本件係争部分の利用が可能であることを前提として専有部分の分譲を受けたものとは考えられず、また、各区分所有者としても、前記の原告組合の管理規定の記載や敷地の持分権の登記の記載、敷地にかかる固定資産税の支払状況に照らせば、本件係争部分が被告の専有部分として留保されていることを認識することができたものといえる。
以上の認定判断によれば、本件係争部分は、被告の専有部分に属し、本件マンションの共用部分ではないというべきである。]
ウィ 東京地判平成10年12月21日判例タイムズ1066号274頁
「1 本件建物(昭和43年竣工)は、地上5階建て、延床面積4708.95平方メートル、戸数68戸のマンションである。
本件建物は、庭園やプール等の設備が設けられたいわゆる高級マンションであり、管理人が常駐していることをセールスポイントとして分譲された。
なお、本件建物に常住している区分所有者は41戸であり、外の区分所有者はリゾートマンション等として使用している。」
(イ) 管理事務室
「2 本件建物部分は、本件管理事務室と本件管理人室からなっている。
本件管理事務室は、1階ロビー及び玄関に面しており、大きなガラス窓とカウンターが設けられていて、本件建物に出入りする人との応対と監視ができるようになっている。また、右管理事務室には火災報知器やキーボックスが設けられており(本件建物の竣工当初は電話交換機も設置されていた。)共用部分である分電盤室等に隣接していて、扉を通じて相互に出入りすることが可能な構造になっている。右管理事務室には、管理人が常駐するのであれば、必要不可欠な便所が設けられていない。右管理事務室から20数メートル先にプールの便所が設置されているが、夏場だけ使用されるものであり、本件建物の竣工当初は証明は無論、屋根すら設けられていなかった。
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二 右認定事実によれば、本件管理事務室は、その構造からして管理人が本件建物の管理を行うものであり、管理事務室以外の用途に使用されることは考え難いことから、共用部分であることは明らかである。」
(ロ) 管理人室
「本件管理人室は、本件管理事務室に隣接しており、やはり一階ロビー及び玄関に接していて、床面積69.48平方メートル、和室2間、厨房、便所、浴室及び洗面所からなっている。本件建物の竣工当初は、右管理人室から直接外部に出入りする扉は設けられておらず、必ず本件管理事務室を通らなければ外部に出入りすることができない構造になっている。また、右管理人室の扉には、外の区分所有者の専有部分とは異なり、鍵穴式の鍵は取り付けられておらず、代々の管理人等が個人で取り付けることができる簡易な鍵を設置していた。
本件建物部分の電気配線は、本件管理事務室及び本件管理人室を一つの安全器で一系統として配線されている。
3 本件管理事務室には、本件建物の竣工当初電話交換機が設けられていた。当時は、電話局の設備拡充が遅れており、区分所有者の各専有部分に電話線を引くことが困難であり、区分所有者は右管理事務室の電話交換機を経由しなければ、電話を使用することができなかった。右電話の使用については、使用時間の制限は約定されておらず、管理人は深夜であっても、電話交換業務に従事した。
4 本件管理規約では、電話配線設備、同交換機、火災報知器及び同報知施設が共用施設として表示されている。また、パンフレットの配置図・平面図には、本件建物部分が空欄とされている上、分譲価格表には、管理事務室と管理人室とが一体として、「管理室」と表示されている。
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そこで、本件管理人室が専有部分か共用部分かにつき判断するに、右管理人室が構造上の独立性を有することは争いがない。
しかるに、・・・本件建物は相当程度の規模を有するマンションである上、いわゆる高級マンションの部類に属し、原告は右建物に管理人が常駐することをアピールして右建物を分譲したこと、右建物の区分所有者の中には、右建物の立地条件等からしてリゾートマンションとして使用する者も相当数いることなどからすれば、区分所有者の生活環境を維持保全し、円滑な生活を営むことができるようにするため、管理人を常駐させ、管理業務を遂行させる必要があるというべきであるが、本件管理事務室だけでは、管理人が常駐し、管理業務を適切かつ円滑に行うことは困難であるという外ないから、本件管理人室は右管理事務室と機能的に一体として利用することが予定されていたというべきである。そうすると、本件管理人室は、利用上の独立性を有しないものと認められる。」
ノ 東京地裁平成12年7月21日判例タイムズ1109号255頁
地下2階にある建物部分(A部分)と、その建物部分と公道とを結ぶスロープ部分(B部分)とが専有部分か法定共用部分かが争われた事例。分譲会社は、駐車場として区分所有者に賃貸する予定でA部分を設計させたが、B部分の幅員が狭く、駐車場としては不適切だったので、現在は、自社の倉庫として使用している。本判例では、裁判所は、A部分が構造上の独立性を有することを認めた。その上で、A・B部分の利用上の独立性について判示したのが以下の判旨である。なお、本件地下2階の構造やスロープ部分の詳細に関する判旨は、「構造上の独立性」の項目におけるワ判例で紹介している。
(イ) A部分ーー駐車場、倉庫+共用設備、通路
「(1) A部分は、その構造上複数の共用部分と接し、そのうち電気室及びゴミ集積場への唯一の出入口となっており、特にゴミ集積場からのゴミを公道へと持ち出したり、A部分に設置されている共用設備を管理する専門業者が出入りするための通路となっている。また、A部分を通らなければ外部に出られない構造となっている倉庫三は、外部へ通じる出入口を有しないことになる。しかも、A部分は、西棟地下二階部分及びゴミ集積室から東棟階段へと避難する際の避難通路にもなっているほか、A部分の天井には、ほぼ全面にわたり給水管などの配管が広範囲に張りめぐらされており、それらの保守点検のための空間として重要な機能を有している。
以上の事実に加え、被告はA部分を本件マンションの延床面積に含めないで登記及び建物取得届をし、同部分についての固定資産税をも負担していないことをも考慮すれば、A部分は、外部から東棟及び西棟へ、両棟及びゴミ集積室から外部へ、又は両棟相互へ出入りするための通路並びに地下二階に設置されている様々な共用設備の補修・管理をするための区画として機能すべきものであり、本件マンションの区分所有者全員の利益のために必要な建物部分であると認めるのが相当である。そして、A部分の構造、面積、形状、機能、管理の必要性その他の事情に照らして考えれば、右建物部分を専有部分として排他的使用に供した場合には、区分所有者等の利用に支障を来すものというべきである。
(2) これに対し、・・・A部分は、本件スロープを通じて直接外部に通じている建物部分であり、同部分は、本件マンションを分譲する際のパンフレット及び管理規約には駐車場として表示され、一時期実際に駐車場として使用されていたのであるから、同部分は独立して駐車場としての用途に供することができる建物部分であるという余地がないではない。
しかし他方、A部分は、外部から車両で進入するためには、勾配の急な本件スロープを下った後、幅6メートルの同スロープを直角に左折し、約2.55メートルの幅しかない右側柱と本件南側擁壁との間のドライエリアへと進入しなければならない構造になっており駐車場として備えているべき規模の進入路を欠いているといわざるを得ない。また、その内部も、中央付近に東西幅約5メートル、南北幅約4メートルのゴミ集積室が位置するため、ゴミ集積室よりも西側に車両を駐車することがそもそも困難であり、東側においても、等間隔に設置された柱があるため、車両の通行が容易ではない構造になっている。そのため被告は、当初A部分を車両12台分の駐車場として利用しようと考えていたにもかかわらず、実際は西側を除いた7台分の駐車スペースしか利用することができず、その7台分も、A部分を利用する際に車両を傷つける者が続発し、同部分の利用を希望する者がいなくなったため、間もなく駐車スペースとしての利用を廃止するに至ったものである。
右のようなA部分の構造及び利用状況にかんがみると、同部分はそもそも当初から駐車場として当初被告が意図していたような規模も構造も備えてはいなかったのであり、同部分の駐車場としての用途は、極めて限定的なものであったとものといわざるを得ない。
(3)なお、A部分は現在被告の商品の保管用倉庫として利用されているから、同部分が独立して倉庫としての用途に供することができる建物部分であるか否かも問題となるが、同部分はそもそも倉庫として設計されたものではないし、倉庫であれば、通常、物品が安全に保管されるよう専有者以外の者が自由に出入りすることができないような構造を有するべきであり、駐車場以上に建物の遮蔽性が重視されるべきものであるところ(被告は現在本件スロープ途中に設けられた門に施錠に、カ点とキ点の間の部分には棚状工作物を設置して荷物を積み上げるなどして、区分所有者ら、その他の者らの立入りを事実上禁止している)、A部分は、ゴミ集積室のエレベーターを通じて各階から直接その内部に出入りできるようになっており、またドライエリアには上部空間との遮蔽物がなく、風雨を防ぐことができないなど(そのため被告は独自にドライエリア上部にプラスティック波板などを取り付けている)、倉庫として通常備えるべき構造を有していない。また、A部分は、現在倉庫として施錠されているが、そのため、共用部分であり、A部分が唯一の出入口となっているゴミ集積場は利用できなくなっている。また、保管されている物品が電気室や機械室へと通じるドアの前まで山積みされているため、右各共用部分への出入りが困難な状態であるし、A部分内に設置されている共用設備である引込開閉器盤、電気メーターや各種パイプ類の修理・保管のために専門業者がA部分内に立ち入って作業することも困難な状況であり、共用設備の保存に多大の支障を来している。
以上によれば、A部分が独立の倉庫の場合と実質的に異なることのない態様で倉庫として排他的に使用できる建物部分であるとは解されないし、倉庫として使用した場合には区分所有者全員の用に供すべき共用部分及び共用設備の利用をも妨げるおそれがあるものであるから、A部分は、倉庫として独立の建物としての用途に供するには適していない。
そのほか、A部分は、その構造上、店舗、住居、事務所などの用途に供するにも適していない、と認められる。
(4) 以上検討したところを併せて考えれば、A部分は、独立して駐車場又は倉庫その他建物としての用途に供するは適しておらず、その機能としては、部分的に車両を駐車させることが可能としても、被告の意図したところはともかくとして、本来的には地下二階の共用部分及び専有部分への通路ないしそれらの機能のために用意された空間部分と考えるのが、A部分の構造に適い、合理的であるというべきであるから、A部分は、本件マンションの区分所有者の利益のために必要な建物部分に当たるものとして、利用上の独立性を有していないものと解するのが相当というべきである。」
(ロ) B部分ーー通路
「・・・A部分は、共用部分として区分所有者全員の利用に供されるべき建物部分であるところ、本件スロープは、設計当初からA部分への通路とすることが予定され、実際、建築後も被告が本件スロープに駐車や物品の保管を始めるまでは同部分への通路として使用されてきたものであるから、B部分は、共用部分であるA部分及びドライエリアと機能的に一体であり、本件マンションの区分所有者全員の共用に供されるべく造られた建物部分として利用上の独立性を有しないことは明らかである。」