専有部分(1棟の建物の)

 「専有部分」とは、「区分所有権の目的たる建物の部分」をいう(区分所有法2条3項)。建物の部分が次の二つの要件を充たしている場合に、それは、区分所有権の目的となりうる。

 (1) 構造上の独立性、利用上の独立性を有すること(区分所有法1条)。構造上の独立性とは、その建物部分が「物的支配に適する程度に他の部分と遮断され、その範囲が明確であること」である(最判昭和56年6月18日民集35巻4号798頁)(「構造上の独立性」の項目参照)。利用上の独立性とは、その建物部分が「独立ノ建物ト同一ナル経済的効用ヲ全フスルコトヲ得ル」ことである(大判大正5年11月29日民録22輯2333頁。川島一郎、「建物の区分所有に関する法律の解説」(上)、法曹時報14巻6号847頁)(「利用上の独立性」の項目参照)。

 (2) 共用部分とする旨の規約の定めがないこと。構造上、利用上の独立性を有する建物の部分は、規約により共用部分と定めることができる(区分所有法4条2項前段)。そのように定められた部分は、これを区分所有権の目的とすることはできない(区分所有法2条1項)(「規範共用部分」の項目参照)。 

 建物の部分が、(1)(2)の要件を充たしている場合において、そのような建物部分が区分所有権の目的となる時期、換言すれば、それらを対象とする区分所有権が成立する時期は何時であろうか。法務省民事局参事官室編、「新しいマンション法」、商事法務研究会、1983、7頁は、「その建物の所有者がその建物を各住戸部分ごとに区分して所有するという意思を外部に表示したときは、区分所有という法律状態とな」り、たとえば、区分建物の表題登記の申請(不動産登記法48条)や分譲マンションとして分譲する旨の広告は、その建物を区分して所有する旨の意思を示したものと解してよいと述べる。他方、同書は、建物所有者が、建築した建物を賃貸マンションとして利用する場合には、区分所有とする必要はない、と解している(上掲 「新しいマンション法」、7頁)。
 しかし、賃貸建物についても、建物の各部分を区分して所有する意思を所有者が表示した場合には、区分所有権の成立を否定する理由はない、という見解が有力である(稲本洋之助、鎌野邦樹、「コンメンタール マンション区分所有法、第2版」、日本評論社、2004、15頁。五十嵐徹、「マンション登記法 第3版」、日本加除出版、2006、27頁)。また、区分所有の意思の表示の対象を「各住戸部分ごとに」と限定することも疑問である。
 最判平成7年1月19日判例時報1520号84頁は、5階建て建物の所有者Aが、その2階部分以外をYに賃貸し、建物全体について賃貸借権設定登記を経由した後で、2階部分をXに譲渡した場合において、XがYに対して、同賃借権設定登記は実体に符合しない無効な登記である、と主張して、その抹消を請求した事件である。最高裁は、「甲が、その所有する一棟の建物のうち構造上区分され独立して住居等の用に供することができる建物部分(本件では二階以外の部分(引用者による注記))のみについて、乙に対し賃借権を設定したにもかかわらず、甲乙間の合意に基づき右一棟の建物全部について乙を賃借権者とする賃借権設定の登記がされている場合において、甲が乙に対して右登記の抹消登記手続を請求したときは、右請求は右建物部分を除く残余の部分(本件では二階部分(引用者による注記))に関する限度において認容されるべきものである」と判示した。
 この判例は、Aが2階部分以外をYに賃貸した時点で区分所有の意思が表示され、2階部分とそれ以外の部分とは別個の専有部分となることを前提としている(稲本・鎌野、上掲「コンメンタール」15頁参照)。

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