構造上の独立性

1 構造上の独立性とは
2 構造上の独立性の基準(最判昭和56年6月18日)
3 判例によるこの基準の適用
 (1) 遮断の程度
 (2) どの時点の建物部分の構造を前提として、構造上の独立性を認定するか
 (3) 建物の部分の範囲は如何にして決まるか
4 資料ーー構造上の独立性に関する判例

   区分所有権は、取引通念上一個である建物の部分の上に成立する所有権である。区分所有法1条によると、1棟の建物の部分がこの所有権の客体となりうるための要件は、イ 構造上区分された部分であり(ただし、そのような部分が複数あることが必要)、かつ、ロ 独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物の用途に供することができるものであることである(区分所有法1条、2条1項)。建物のある部分がイの要件を充たしている場合に、そのような部分は「構造上の独立性」を有するという(川島一郎、「建物の区分所有等に関する法律の解説(上)、法曹時報14巻6号846頁)。 
 一般に、物権の目的物は独立の物であることを要するところ(我妻栄著、有泉亨補訂、「新訂物権法」、岩波書店、1983、12頁)、土地の定着物のうちで土地と離れて独立の不動産とみられるものの典型は建物である(我妻栄、「新訂民法総則」岩波書店、1965、213頁)。土地の定着物が「建物」にあたるか否はもっぱら社会の取引観念に従って定めるしかない(上掲「新訂物権法」、14頁)。
 ところで、1個の建物であっても、それが区分されてそれぞれが独立の建物たる価値を有するに至ったときは、それぞれを独立の建物として扱うことができる(上掲、「新訂物権法」、14頁参照)。構造上区分されない建物の部分が物権的支配に適しないことはいうまでもないから、「構造上区分された建物の部分」であること(建物の部分が「構造上の独立性」を有すること)という要件は、建物の部分を独立の建物として扱うために必要な条件であり、区分所有法1条が、建物の部分が区分所有権の目的物(客体)となりうるために必要な要件として「構造上の独立性」を挙げたことは、当然のことを規定したに過ぎない(川島、上掲「解説(上)」、846頁参照)。

2 構造上の独立性の基準(最判昭和56年6月18日)

 最判昭和56年6月18日民集35巻4号798頁は、この「構造上の独立性」がどのような場合に認められるべきかについて、次のように判示した。「建物の区分所有に関する法律一条にいう構造上区分された建物部分とは、建物の構成部分である隔壁、階層等により独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断され、その範囲が明確であることをもって足り、必ずしも周囲すべてが完全に遮蔽されていることを要しないものと解するのが相当である」(この判例はマンションの一階部分に位置している車庫が構造上の独立性を有していることを認めた原審判決を認容した判例である)。
  本件判旨の重要な点は、「構造上の独立性」が認められるためには、建物の部分は、他の部分とどの程度明確に区分されていなければならないかについて、「独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断され、その範囲が明確であることをもって足り、必ずしも周囲すべてが完全に遮蔽されていることを要しない」と判示した点である。
 1962年の区分所有法制定に携わった川島一郎判事は、「『構造上区分された』というのは、建物の構成部分である隔壁(仕切り壁)・階層(床及び天井)等によって他の部分と完全に遮断されることを意味する・・・」(川島、上掲「解説(上)」、846頁)と述べていた。また、登記実務においても、「A建物(区分所有法の用語では、A建物部分ということである)(括弧内は本項目執筆者による注釈))とB建物とが木製・ガラス製ドア、スチール製シャッターで仕切られている場合はドア、シャッターが固定している限りAB両建物は構造上区分されているものとして取り扱われている(注省略)が、床面に釘を打つ等して標識を設置しただけの観念的な隔壁では構造上の区分の要件を満たさないと解されている(注省略)」といわれている(遠藤賢治、「最高裁判例解説[24]」(最判昭和56年6月18日))。
 遠藤判事の解説は、本判例について、「物的支配が可能かどうかは、社会通念によって決せられるものであるから、単に隔壁の存否及び構造だけで判断できるものではなく、当該建物の利用状況ないし利用形態を考慮せざるをえない(注省略)ために、個別具体的な判断に委ねたものと思われる。」と述べている(上掲最高裁判例解説)。この解説によると、これは、「完全遮断性」の原則(「構造上区分された」というのは他の部分と完全に遮断されることを意味するという上記川島判事の解説の見解)を採らず、構造上の独立性の判断を社会通念により決すべき旨判示した判例であるということになる。
 本判例のこのような理解に対しては、本判例は車庫の場合の遮断性に関する判断であり、「完全遮断性」が原則であることは現在においても変わりはないはずである、という見解(五十嵐徹、「マンション登記法 第3版」、日本加除出版、2006、23頁)もある。

3 判例によるこの基準の適用
 以下では、最判昭和56年6月18日およびその後の下級審判例が、構造上の独立性に関する上記基準を具体的な事案にどのように適用しているかを検討する。なお、これらの判例については、その判旨の抜粋を中心として、判決年月日順に4で紹介している。3で引用した判例に付されているイ、ロ等の符号は、4で紹介した判例に付した符号である。

(1) 遮断の程度
イ 車庫・屋内駐車場
 車庫若しくは屋内駐車場の事案においては、上掲五十嵐、「マンション登記法 第3版」24頁が指摘しているように、完全遮蔽性の原則は貫かれていない。すなわち、下級審判例は、①車庫の出入口が周辺の柱や天井のひさしにより区分されている場合(イ判例)、②車庫の境界が地下車庫への通路や区道との段差により区分されている場合(ロ判例)、③屋内駐車場の車両出入口以外は他の部分と区分されている場合(ハ判例)、④駐車場の一部の境界がコンクリート柱により画されている場合(ト判例の(イ))、⑤駐車場の境界が左右の柱の外面を結ぶ線、花壇の植え込み、2階バルコニーの底面を垂直に下ろした線により区分されている場合(チ判例)に、「構造上の独立性」を認めている。チ判例では、さらに左右の上部空間の一部に範囲の不明確な部分があっても「構造上の独立性」を認める妨げとはならない、と判示している。また、⑥ワ判例は、駐車場に利用するつもりであった地下二階の建物部分が駐車場に適しないので倉庫として使っていた事案において、その部分の一部は屋根がなく、また、駐車場入口は遮断されていないにも拘わらず、構造上の独立性を認めている。これに対し、⑦ヌ判例は、若干特殊な事案であるが、駐車場として使われている建物部分の1辺の大部分が吹き抜けとなっており、他の一辺は色違いのタイルにより境界が画されている場合に、その建物部分は物的支配に適する程度に他の部分と遮断されているとは認められない、と判示している。
 これらの判例によると、⑦判例のような例外はあるが、駐車場用の構造を有する建物部分の場合には、建物部分の境界が、車両出入口を除き、何等かの構造物により画されていれば、構造上の独立性を広く認めている、と考えられる。

ロ 管理事務室等
 管理事務室(ニ判例、ト判例)、管理人室(ニ、ホ、ヘ、リの各判例)、倉庫室(ト判例)、休憩室(ト判例)、各種の機械・設備室(ト判例)などでは、判例は、完全遮断性を有していることを理由に、構造上の独立性を認めている。しかし、建物部分が他の建物と完全に遮断されている場合に構造上の独立性が認められるのは当然である。管理事務室等の場合について、下級審判例が完全遮断性の原則を採用している、といえるためには、これらの建物部分に完全遮断性が認められないことを理由としてその構造上の独立性を否定した判例がなければならない。しかし、そのような判例は、見あたらなかった。したがって、管理事務室等については、完全遮断性の原則が適用されているか否かが、判例上では、明確ではない。
 管理事務室等の類型の建物部分は、通常、他の建物部分と構造上遮断されている筈であり、遮断されていない場合は、特殊な理由によると考えられる。したがって、管理事務室等については、完全遮断性の原則が適用されているか否かを問題にすること自身あまり意味がないと思われる。

ハ ピロティ
 ピロティについては、「一部に壁があるだけで他の部分は8本の脚柱があるだけの」ピロティ部分について、構造上の独立性を認めている(ヲ判例)。なお、ピロティとは何かについては、「利用上の独立性」の項目参照。

ニ その他
 ト判例は、大ホール、ゲストルーム5室、廊下、ウェイティングルームで構成される2階の建物部分について、一階ロビーへの出入口となる開口部があっても構造上の独立性を認めている。同様に、一階ロビー部分について、玄関ホールとの間に開口部があっても構造上の独立性を認めている(ト判例の(ロ))。また、 ワ判例は、地下2階の空間の内、機械室、洗濯室、エレベーターホール、倉庫、電気室などを除いた部分を占める広いスペースについて構造上の独立性を認めている。
 他方、ル判例は、バルコニーについて、「構造上の独立性という点において、今日の考え方からすると専有部分とはいい難い面がある」ことを認めながら、当該バルコニーが売買契約書の物件の表示において専有部分として表示されていることを理由として、専有部分であると判示している。この判例については、「利用上の独立性」の項目でくわしく検討する。

(2) どの時点の建物部分の構造を前提として、構造上の独立性を認定するか
 建物完成後も、その部分には、さまざまな変更が加えられることが少なくない。たとえば、ル判例では、本件バルコニーに接続する住戸を購入したA(本件訴訟の被告の前主)は、購入から半年ほど後に、本件バルコニーに、工作物を設置し、囲いをしたが、裁判所は、構造上の独立性を検討する際には、このような建物部分の変更を考慮に入れてはいないように見える。また、ワ判例では、もともと、駐車場として使うつもりだった地下二階の建物部分を倉庫として使わざるを得なくなったために、その建物部分やそこへの通路にさまざまな変更を加えたが、裁判所は、構造上の独立性を判断するに当たり、爾後の変更を考慮に入れていない。
 ある建物部分が構造上の独立性を有することはその部分が区分所有権の対象となり得るための必要条件であるから、その建物の所有者がこれを区分所有建物とする旨の意思を示す時点を基準として、構造上の独立性の要件が満たされているか否かを判断すべきであると考えられる。そうだとすれば、構造上の独立性の要件が満たされているか否かの判断の前提となるその建物部分の構造は、やはり、建物所有者がその意思を示した時点を基準とすべきであろう。

(3) 建物の部分の範囲は如何にして決まるか
 判例を読むと、一つの建物の部分の範囲は、原則として、原告の主張により決まっているようである。たとえば、ト判例では、原告は、大ホール、ゲストルーム5室、廊下、ウェイティングルームで構成される2階の建物部分全体が、区分所有者の会合、冠婚葬祭の用に供される法定共用部分であると主張し、裁判所も、その全体が専有部分か法定共用部分かを検討している。
 しかし、場合によっては、裁判所は、原告の主張する建物部分の範囲とは、異なる範囲を一つの建物部分と認め、それが専有部分か法定共用部分かを検討している。すなわち、ワ判例では、原告は、A部分(地下二階部分から、東側の機械室等、西側の電気室等を除いた部分)が法定共用部分であると主張したが、裁判所は、A部分に接しているドライエリアと呼ばれる部分はA部分と一体の建物部分であると解して、その全体について、専有部分か法定共用部分かを検討している。また、ヌ判例も、原告の主張する建物部分を二つの建物部分に分けて専有部分か共用部分かを認定することが可能であることを前提としている。

4 資料ーー構造上の独立性に関する判例
 ここで取り上げているのは、稲本洋之助、鎌野邦樹、「コンメンタール マンション区分所有法、第2版」、日本評論社、2004、五十嵐徹、前掲「マンション登記法 第3版」、升田純、「要約マンション判例155」、学陽書房、2009の何れかで取り上げられている判例である。ただし、最判昭和56年6月18日より前の判例は、同判例の原審判例を除き、取り上げていない。したがって、構造上の独立性に関する判例を網羅しているわけではない。 

イ 東京高判昭和53年8月16日(上掲最判昭和56年6月18日の原審判決、民集35巻4号815頁)。
 「本件車庫は、その周囲3面をブロック壁で仕切ってあって、本件建物の他の部分と明確に区別されており、本件建物の敷地部分への出入口のみは扉又はシャッターなどによる仕切りがないが、それは車両の出入が頻繁に行なわれる車庫の性質上やむを得ないところであり、扉又はシャッターなどがなくても、車庫入口に並んで立っている前記4本の柱及び天井のひさし部分によって本件車庫部分と本件建物の敷地部分の境界は明確に区別されている・・・。」 原審は、このような事案において、構造上の独立性を認め、最高裁もこれを認容した。

ロ 東京地判昭和57年1月27日判例時報1050号88頁
 管理人室、第1車庫、第2車庫について、専有部分か否かが争われたが、構造上の独立性の有無が特に問題となったのは、第2車庫であるから、ここではその構造上の独立性を認めた判決理由だけを引用する。
 「第2車庫は、同部分を二つの壁面、北側の地下車庫への通路及び西側区道との段差によって他の部分から明確に区別されており・・・本件第二車庫が車両の保管、その出し入れ等の用に供するためのものであることを合わせ考えると右のような開放的な構造をもっていることは、むしろ必要なものであるから、これによって、本件第二車庫の構造上の独立性が妨げられるとは到底いい難い。原告らは、本件第二車庫は、東側の壁面及び南側のコンクリート壁を除いて、周囲に壁等の遮蔽物がなく、構造上の独立性がない旨主張するが、隔壁を設けるかどうかは、それぞれの利用目的に即して決すべき事柄であって、要は、その範囲が明瞭である以上、区分所有権の目的足りうると考えて差し支えない・・・。」 

ハ 東京高判昭和60年4月30日判例時報1156号74頁
 車両用出入口以外の部分は障壁・階層等によって遮断され又は他の部分と区分されている屋内駐車場について、構造上の独立性を認めた。

ニ 東京地判昭和60年7月26日判例時報1219号90頁
 管理事務用に供されている101号室および管理人が宿泊用に利用していた102号室が、何れも本件建物の他の部分と明瞭に区分されているとして、構造上の独立性を認めた。

ホ 東京地判昭和63年11月10日判例時報1323号92頁
 管理人室について構造上の独立性を認めた。

ヘ 東京地判平成元年3月8日判例タイムズ715号239頁
 管理人室(和室二間、台所、便所、出入口からなる)に隣接して管理事務室があり、両室の間はガラス引戸および壁で仕切られている場合に、管理人室は構造上および利用上の独立性を有しており、管理事務室とは別個の専有部分であることを認めた。

ト 東京地判平成元年10月19日判例時報1355号102頁
  本判例では、(イ)(ロ)で述べる駐車場および二階のスペース、一階のロビーの外に、管理室、倉庫室、自家発電室、バッテリー室、メーター室、事務所、機械室、トランクルーム、電気室、休息室などについても、専用部分か否かが争われた。判例は、これらについては、ドアの開口部を除きコンクリートの隔壁で囲まれているという理由で、構造上の独立性を認めた。
(イ)駐車場。
 「東西に長いほぼ長方形をしており、うち東側と西側は一部ドアの開口部があるほかはコンクリートの隔壁となっている。南側は一部コンクリート隔壁があるほか、建物の躯体となる9本のコンクリート柱が境界を画する形となっている(なお、右柱の南側に幅約3メートルのコンクリート床の空地があり、これが本件駐車場と一体として使用できる状態になっており、しかも右空地は三方をコンクリートの擁壁で囲まれ、柱と右擁壁との間の上部には波形プラスティック板が設置されている。)。北側も一部コンクリート隔壁があるほか大部分は南側と同様のコンクリート柱で外部との境界を画する形となっている。そして、階層は、コンクリートの天井及び床によって明確に区分されている。」 このような状況の下において、本件駐車場が、全体として構造上の独立性を有することを認めた。
(ロ)2階のスペース(ゲストルーム5室、大ホール、廊下、ウエイティングルームからなる)および1階のロビー
 「2階部分の四方は、ドアの開口部とウエイティングルーム部分において吹き抜けに向けて開口部(一階への階段に面しているようである(引用者))があるほか、全体としてコンクリート等の隔壁、窓等によって囲まれ、その範囲は明確であり、階層についても、廊下及びウエイティングルームの床部分に階段の開口部があるほかはコンクリーt-の天井及び床によって明確に区分されているから、構造上の独立性があるということができる。また、一階のロビー部分も、四方は玄関ホールとの間に開口部があるほかは、コンクリート等の隔壁やガラス窓によって囲まれており、階層もコンクリートの天井及び床によって明確に区分されているから構造上の独立性があるということができる。」

チ 東京地判平成2年1月30日判例時報1370号80頁
 「本件駐車場がその一部に自転車置場を含むものの、大部分が駐車場として利用されていることを考慮すれば、住居部分と同じ程度にその範囲が明確である必要はなく、建物の部分として独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されている限り、建物の区分所有等に関する法律第1条にいう構造上他の部分と区分された建物部分というを妨げないと解せられるところ、少なくとも、本件駐車場は、前面は左右の柱の外面を結ぶ線、奥は鉄筋コンクリートの構造壁まで、左側は花壇状の植え込みの内法の線、右側は、少なくとも2階バルコニーの底面を垂直に下ろした線で囲まれた範囲の床面並びにその天井高(バルコニー底面)までの上部空間の範囲において、駐車場の範囲が画されていると認められるのであって、左右の上部空間の一部に範囲の不明確な部分があるにしても、争点となっている・・・本件駐車場部分は、なお、本件マンションの建物の一部として、建物の区分所有等に関する法律第1条にいう構造上の独立性を有すると認めるのが相当である。」

リ 東京高判平成2年6月25日判例タイムズ755号207頁
 ヘで説明した東京地判平成元年3月8日の控訴審判決。構造上の独立性は問題なく認められた。

ヌ 東京地判平成3年2月26日判例タイムズ768号155頁
 マンションの一階部分が広いピロティになっており、そのマンションの分譲会社であり区分所有者でもあるYが、専有部分として、駐車場(車五台分)に使っていた。ところが、そのマンションは、公道に接している出入口からそのピロティを通り、玄関ホールへ行き、そこから階段で住居部分に行くという構造だったので、Y以外の区分所有者は、ピロティは法定共用部分だと主張した。それに対し、Yは、ピロティを通行する必要があるにしても、ピロティ中の通路部分には他の部分の床とは異なる色のタイルが使われているから、ピロティ内の通路部分は、その色違いのタイルが張ってある部分だけで、他の部分は法定共用部分とする必要がない、と主張した。
 裁判所は、「本件ピロティーは、・・・吹き抜け構造となっている上に、前記色違いのタイル部分と他の部分との間には、これを区別する何らの物理的な構造物は存在せず、またh、実際の利用状況を考えても、本件ピロティーの広さ、二つの入口と玄関ホール・階段との位置関係からみて、本件ピロティーのほぼ全域が、本件居住者の用に供されているものとみることができる。したがって、被告が駐車場として使用してきた本件ピロティー部分が、独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されているとは到底認め難い・・・」と判示した。
 なお、本判例については、「利用上の独立性」の項目におけるヲ判例で、判旨を詳しく紹介している。

ル 東京地判平成4年9月22日判例時報1468号111頁
 本件マンションの6階604号室39.15平方メートルに付設されているバルコニー11.58平方メートル(本件バルコニー)が、専有部分か法定共用部分かが争われた事案。同室区分所有者Yが購入から半年ほど後に、本件バルコニーに、その「住居部分から約85センチメートルの箇所に高さ約40センチメートルのブロックを、長さ約510センチメートルに渡って積み、その上に高さ約132センチメートル、幅約85センチメートルのアルミサッシュのガラス戸6枚を設置し、右ガラス戸と居室との間に木製の合板を張り、天井部分には、ベニヤ板を張った。」ので、同マンション管理組合Xがその撤去を求めた。裁判所は、本件バルコニーは「構造上の独立性という点において、今日の考え方からすると専有部分とはいい難い面がある。」と判示したが、「本件建物が売買された昭和50年当時には、まだ、専有部分と共用部分との区別が必ずしも確立しておらず、その区分もあいまいであったといわざるを得ない上、・・・本件マンションの販売パンフレットでは、本件バルコニーは専有面積から除かれているが、売買契約書の物件の表示には専有部分と表示されていることから、昭和50年6月14日の旭交易と大沢との売買において、本件バルコニーは、専有部分として売買されたといわざるを得ず、本件バルコニーは専有部分といわざるを得ない。」と判示した。

ヲ 神戸地判平成9年3月26日判例タイムズ947号273頁
 本件マンションの1階部分が、ロビー部分とピロティー部分に分かれており、ピロティ部分は、「8本の脚柱のある空間部分であり、東部、南部には壁面がなく、西部分にはその北側半分ほどにコンクリート製の壁面があり、北部のうちロビー部分と接している西側部分にコンクリート製の隔壁があり、鉄製の扉も設置されている」という場合に、そのピロティー部分の構造上の独立性を認めた。
 なお、本判例については、「利用上の独立性」の項目におけるヨ判例で、判旨を詳しく紹介している。

ワ 東京地判平成12年7月21日判例タイムズ1109号255頁
 本件マンションの「区分所有者である原告らが、本件マンションの分譲業者であるとともに、区分所有者でもある被告に対し、被告が専有部分であるとして所有権を主張している本件マンション地下2階のうち・・・A部分及びB部分について、それらがいずれも本件マンションの共用部分であることの確認を求めた事案・・・
 2 本件マンションの構造
 (一)全体の構造
 本件マンションは、鉄筋コンクリート鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下二階付10階建の建物であり、専有部分としては、居宅及び事務所合計189戸が公道を背にして左側(東側)及び向かって右側(西側)の西棟のそれぞれ一階から一〇階に、店舗、事務所、応接室等が地階に、倉庫、洗濯室等が地下二階にそれぞれ設けられている。
 本件マンションの居住区域は右のとおり東棟と西棟との一階以上に分かれており、右両棟が地階の玄関ラウンジ部分、その上部に当たる一階の外部廊下、二階から九階の各階南側にあるブリッジでつながっているため、本件マンション全体は平面図でみると『コ』の字型をしている。本件マンションの正面玄関に当たる部分は右両棟をつなぐ地階部分にあり、・・・正面玄関へは、公道から本件敷地中央に設けられた階段を降りて、本件広場床(地階床面と同一平面上で接続する広場様の広場の床面。土部分はなく、表面は三角タイル貼ーー括弧内は引用者による注記)を通って行く構造となっている。また、西棟の西側には、同棟一階床部分に同一平面で接続する避難用人工基盤(バルコニー様の通路)が設置されており、公道から本件スロープの右側(本件敷地の西端)に設置された階段(以下『西側階段』という)を利用すると、右人工基盤を通って、西棟一階の各区分所有建物に直接で入りすることができるようになっている。
 本件マンションのうちイ点とウ点とを結ぶ直線(本件スロープの西端線)上には、一階床面相当の高さまで立ち上がる塀(・・・『本件西側擁壁』)が築造されている。右擁壁は、西棟から東西方向に走る梁と接続して本件マンションを支えている。また、ウ、エ、コの各点を結ぶ直線上にも、一階床面相当の高さまで立ち上がる壁(『本件南側擁壁』)が築造されている。右擁壁は、ウ点において本件西側擁壁と、コ点において東側地下二階部分と接着しており、また、西棟から南北方向に走る梁とも接続して本件マンションを支えている。・・・
(二) 本件スロープ
(1)本件スロープは、本件敷地西側に位置し、公道から地下二階へと通じるかなり勾配の急な坂道で、その幅は約6メートル、深さ(公道から地下二階床面までの距離)は約6.4メートル、床面積は174平方メートルであり、そのうちB部分の床面積は126平方メートルである。
(2)本件スロープの周辺のうち、公道を背に向かって左側(東側)は西棟の外壁で、向かって右側(西側)の壁面の内ア点とイ点とを結ぶ直線上は西側階段の外壁で、イ点とウ点とを結ぶ直線上は本件西側擁壁で、ウ点とエ点とを結ぶ直線上は本件南側擁壁でそれぞれ囲まれている。
  公道を背に向かって左側壁面(西棟外壁)の途中には、本件スロープから地階へと通じる開口部があるほか、カ点とキ点とを結ぶ直線上及びA部分の南側に位置する吹き抜け部分(『ドライエリア』)への入口であるエ点とオ点とを結ぶ直線上には壁のない部分があるが、カ・キ点とA部分の床面とは同一平面ではなく本件スロープの勾配に沿った段差があり、両点の間からA部分に通常の方法で出入りすることは困難な構造となっている(なお、カ点とキ点の間の部分には、現在、被告が棚状工作物を設置して荷物を積み上げているため、実際には出入りもできない)。一方、本件スロープから公道へと通じるア点とケ点とを結ぶ直線上にも、B部分の北端であるイ点とク点とを結ぶ直線上にも、門やシャッター等の遮断物は設置されていないが、B部分の半ばには被告によって金属製の門が設置されており、これを施錠することにより、外部から地下2階への出入りを制限することができるようになっている。本件スロープのうちB部分を除くア、イ、ク、コ、アの各点で囲まれた部分には天井がなく、上部が外気に開放されているが、B部分は、上部のほとんどが人工基盤により覆われている。ただし、イ点とウ点とを結ぶ直線上にある本件西側擁壁は人工基盤の西端よりも更に西寄りの地位に建造されているため、本件西側擁壁は人工基盤の西端と接着しておらず、その結果、B部分の西端は一部外部への吹き抜けとなっている部分がある。
(3)公道から、地下2階のA部分へ入るためには、本件スロープを下り、その突き当たり(南端)をほぼ直角に左折した上、南北幅約3メートル、東西幅約23.5メートルのドライエリアを通り抜ける必要があるが、更にドライエリア部分に入って直ぐ左手(北側)に、南北幅60センチメートル、東西幅約6メートルの鉄筋コンクリート柱があるため、左折した直後のドライエリアの幅(エ点とオ点の間)は約2.55メートルしかなく、車両の運転手は直角に左折を強いられる上更に狭隘なる通路を進行することを余儀なくされる構造となっており、右部分を通行するには相当の運転技量を要する。
(三) A部分
(1)A部分は、本件地下二階部分のうち、東側地下二階部分と西側地下二階部分との間に位置する床面積291.67平方メートルの建物部分であり・・・その南側にドライエリア、東側に機械室、洗濯室、エレベーターホール並びに倉庫一および二から構成される東棟地階二階部分、西側に電気室及び倉庫三から構成される西棟地下二階部分がそれぞれ隣接し、その中央部分には、ゴミ集積場、ダストシュート及びエレベーターから構成される建物部分(『ゴミ集積室』)が存在している。
 A部分とドライエリアとの間には、西側に右側柱があるほか遮蔽物はないが、ドライエリアの南側(エ点とコ点とを結ぶ直線上)は本件南側擁壁、A部分の東側は東棟地下二階部分の壁面、西側は西棟地下二階部分の壁面で、北側のサ点とシ点との間は地下二階の床下から地階の床下へと立ち上がる擁壁(上辺は地階ロビー及び本件広場床下に打設された基盤に接着し、サ点及びシ点でそれぞれ東側地下二階部分及び西側地下二階部分と接着している(『本件北側擁壁』))、中央付近に存するゴミ集積室との間はコンクリート壁でそれぞれ区分されており、また上部は地階建物部分の床面及び本件広場床でそれぞれ他の建物部分と外部と遮断されている。ただし、ドライエリアの上部には地階部分が存在しないため、ドライエリアは幅約三メートルにわたり地下二階から外部への吹き抜けとなっている(なお、現在は、降雨を防ぐため、被告がドライエリアの上部にテントと塩化ビニール製の波板屋根を設置している)。また、A部分と接する右建物部分の出入口には、いずれも鉄製の防火扉又はエレベーター扉が取り付けられており、これらを閉じることによりA部分との間は完全に遮断できるようになっている。
 A部分の南北幅は最大の箇所で約21メートル、東西幅は最大の箇所で約23.5メートルであるが、そのほぼ中央付近に東西幅約5メートル、南北幅約4メートルのゴミ集積室が存在するため、A部分のうちゴミ集積室より西側の幅は狭くなっている。また、A部分の北側及び東側部分には、本件マンションを支える0.7メートル平方の構造柱が4本、等間隔で建造されている。
(2) A部分に隣接する東棟地下2階部分(床面積約206.45平方メートル)は、・・・その北側半分を共用部分である機械室で占められており、そのほか共用設備であるエレベーター、共用部分であるエレベーターホール、被告の専有部分である洗濯室、倉庫1及び倉庫三(ガスボンベの保管庫)から構成されており、A部分から同建物部分へは機械室及びエレベーターホールの出入口を通じて出入りすることができる。倉庫一内には上階へと通じる階段があり、同部分が非常口とされているため、地下2階で火災等の緊急事態が生じた場合、A部分、ゴミ集積室又は西棟地下2階部分内にいる者は、誘導灯に従って、A部分から東棟地下2階部分内のエレベーターホールを通り、右階段を使用して避難することとされている。
 機械室内には、本件マンションの全区分所有建物へ給油するためのボイラー及び給水槽が設置され、終日ボイラー作業員が滞在しており、同室は主にボイラー室として利用されている。また、同室の床には、地下2階の床下に設置されている複数の受水槽へと通じるマンホールが四つある。
 洗濯室は、分譲当初は本件マンションの各区分所有者らが使用できる有料のコインランドリーとして利用されていたが、現在は廃止され、右機械室で勤務するボイラー員の休憩場所として使用されている。
(3) A部分に隣接する西棟地下二階部分(床面積約80.53平方メートル)は、・・・共用部分である電気室及び被告の専有部分である倉庫三から構成されており、A部分から同建物部分へは電気室及び倉庫三の出入口を通じて入ることができる。西棟地下二階部分内には、直接外部へ通じる通路や階段、エレベーターは存在せず、A部分へ通じる出入口が、西棟地下二階部分への唯一の進入路である。
 電気室の内部には、本件マンションの全区分所有建物へ電気を供給するための変電設備が設けられており、電力会社の作業員が電力の保守・点検のために出入りすることがあるが、一般の区分所有者の立入りは禁止されている。また、ス点とセ点との間の壁面には、共用設備である引込開閉器盤及び電気メーターがある。
(4) ゴミ集積室(床面積約15.44平方メートル)は、・・・共用部分であるゴミ集積場、ダストシュート及びエレベーターから構成されており、ゴミ集積場へはA部分へ通じる出入口が唯一の出入口である。また、エレベーターは本件マンションの各階の廊下に通じており、各階からエレベータを利用して直接A部分に入ることができる。
 本件マンションにおいては、各区分所有者が出すゴミは各階からダストシュートを通じてゴミ集積場へと集められ、ゴミ収集車が回収に来る直前にまとめて公道に出す仕組みとなっており、右ダストシュート及びゴミ集積場は全区分所有者らのために使用されていた。なお、ゴミ集積場は、被告が本訴提起後の平成7年ころにダストシュートを閉鎖したため、現在は利用されていない。
(5) A部分の天井部分には、ほぼ全面にわたって、給水管(揚水管、膨張管)、冷却水(往管、還管)、ドレーン管など本件マンションの各区分所有者の生活に不可欠な共用設備が縦横無尽に張りめぐらされている。また、A部分の床下には、受水槽・汚水槽・排水槽・エレベーターピットなどの共用設備が設けられている。
3 A・B部分の公簿上の表示等
 被告は、本件マンション完成直後、東京法務局澁谷出張所に対し、同マンションの専有部分と共用部分とを分けて登記申請し、その際、A部分についてはこれを専有部分として登記手続をしようとしたが、周囲が完全に遮断されていないという理由で受け付けられなかったため、本件マンションの地下2階の床面積に東棟地下二階部分、西側地下二階部分及びゴミ集積室のみを算入することとし、A・B部分及びドライエリアの床面積を延床面積に含めずに登記を了した。被告は、同じころ、都税事務所に対しても、本件マンションの専有部分と共用部分とを分けて建物取得届をしたが、その際もA・B部分を本件マンションの延床面積に含めた申請をしなかった。
4 A・B部分の利用状況の推移
 被告は本件マンションの設計段階において、A部分を車両12台分の賃貸用駐車場(・・・)、B部分を右駐車場へ通じる出入路として利用しようと考え、分譲する際に配布したパンフレット記載の配置図にも、地下二階のうちA部分に当たる部分を「駐車場」、B部分に当たる部分を「スロープ」と表示し、区分所有建物の買受人らとの間で締結した管理請負契約に係る管理規約にも、右駐車場が被告の専有部分である旨の規定を設け、本件スロープの壁面にもその旨を掲示した。
 被告は、本件マンション完成後実際にはA部分のうちゴミ集積室から西側の部分に駐車することは困難であることが判明したため、ゴミ集積室より北側及び東側の部分を車両七台分の駐車場として利用することとし、昭和49年ころから右七台分の駐車スペースの一部を本件マンションの区分所有者らに賃貸し、一部は自ら使用するようになった。しかしその後、車両が本件スロープを下り、鋭角に左折してドライエリアへと侵入する際に、通路が狭すぎて車両が傷つく事故が相次ぎ、駐車場としての利用を希望する者がいなくなったので¥¥ため、被告は昭和59年ころからA部分の駐車場としての利用を廃止して、同部分を自社の販売するステンドグラスの保管用倉庫として利用することとし、一方的にB部分半ばに金属製の門を設けた上これを施錠して一般の区分所有者の出入りを禁じ、A部分には多数のステンドグラスや作業用機械を電気室や機械室の前にも積み上げ、本件スロープには自社の車両や物品を置くなどして、A・B両部分を排他的に使用、占有するようになり、現在に至っている。
二 ・・・
1 A部分について
(一)構造上の独立性の具有について
(1) 前記認定によれば、A部分(なお、地下二階の構造上、ドライエリア自体が独立の建物としての機能を有するものでないことは明らかであるから、ドライエリアはA部分と一体の建物部分と解するのが相当であり、以下においては、これを前提として、A部分とドライエリアとを併せた建物部分の独立性を検討する)は、その四方を本件マンションの構造部分である壁や擁壁で、上部は地階建物部分の床下及び本件広場床で、下部はコンクリート打ちの床面でそれぞれ囲まれ、その範囲は東棟地下二階部分、西棟地下二階部分、本件敷地、地階及び地下二階床下との間で明確に区分されているから、A部分は、一応構造上の独立性を有しているものと認めるのが相当である。」
 判例は、これに続き、A部分の利用上の独立性について検討し、これを否定し、これに基づき、A部分を専有部分と認めることはできない、と判断している。 また、B部分については、「利用上の独立性」を否定したので、「構造上の独立性」については検討していない。
 なお、A・B部分の「利用上の独立性」関する判示については、「利用上の独立性」の項目におけるレ判例で、判旨を詳しく紹介している。

 なお、「利用上の独立性」、「専有部分」の項目参照。

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