一棟の建物

 「一棟の建物」ということばは、区分所有法1条の前身である民法208条(区分所有法の制定のときに削除された)ですでに使われていた。
  民法208条1項 「数人ニテ一棟ノ建物ヲ区分シ各其一部ヲ所有スルトキハ建物及ビ其附属物ノ共用部分ハ其共有ニ属スルモノト推定ス」
 しかし、同条の解説においても、このことばについて特に説明をしていなかった。

 区分所有法1条でも、このことばは定義されていない。これは、社会通念上「一棟の建物」と判定される構造物について、その部分を目的として所有権(区分所有権)が成立している場合(区分所有法1条、2条1項、3項)に、そのような法的状態にある構造物を指す場合に用いられる(稲本洋之助、鎌野邦樹著、「コンメンタール マンション区分所有法 第二版」、日本評論社、2004、6頁。五十嵐徹、「マンション登記法 第三版」、日本加除出版、2006、21頁参照)。たとえば、あるデベロッパーがマンションを一棟建築し、それを分譲する意思を示している場合には、そのマンションの建物全体が「一棟の建物」である。それに対し、そのデベロッパーが、そのマンションを分譲する意思を示していない場合には、そのマンション全体が一つの所有権の客体であり、この場合には、そのマンションを、特に、「一棟の建物」とは呼ばない。

 「建物」と「一棟の建物」とは同義ではない。第1に、「1棟の建物」は一つの所有権の客体ではなく、その部分が一つの所有権の客体である。第二に、「物理的には数個(数棟)でありながら、利用上・機能上は全体をまとめて一個の建物と認めることのできるような場合、逆に、物理的には全体が一個(一棟)でありながら、利用上・機能上はそれぞれ独立性をもった数個の区画に分かれていると認めることもできるような場合」において、前者の場合に全体を一個の建物とする場合があり、後者の場合に各部分をそれぞれ一個の建物として取り扱う場合がある(幾代通著、徳本伸一補訂、「不動産登記法(第4版)」、有斐閣、1994,44頁参照)。
 区分所有法では、「建物」ということばがしばしば使われているが、第一章の各条で使われている場合には、これは「一棟の建物」を指す、と解されている(上掲稲本洋之助、鎌野邦樹著、「コンメンタール マンション区分所有法 第二版」、6頁)。(「建物」、「区分所有建物」の項目参照)。

 

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