一部共用部分と全体共用部分

  たとえば、あるマンションAについて「共用部分」となるのは、①Aの専有部分以外の部分(法定共用部分および規約共用部分)、②Aの付属物、③Aの附属の建物である(詳しくは、「専有部分」、「共用部分」、「建物の附属物」、「附属の建物」の項目参照)。これらの共用部分のうちで、Aの区分所有者の一部のみの共用に供されるべきことが明らかなものを、一部共用部分という(区分所有法3条後段)。これに対し、一部共用部分ではない共用部分は、しばしば、「全体共用部分」と呼ばれる(たとえば、東京地判平成10年5月14日判例時報1667号81頁)。 

 全体共用部分は、区分所有者全員の共有である(区分所有法11条1項本文)。すなわち、上記Aマンションの場合でいえば、その全体共用部分は、Aの区分所有者全員の共有である。それに対し、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有である(区分所有法11条1項但書)。たとえば、下駄ばきマンションにおいて、下層階の店舗部分のみの用途に供される出入口、通路、エスカレーターなどは一部共用部分であると解されており(法務省民事局参事官室編、「新しいマンション法」、商事法務研究会、1983、94頁)、店舗部分の区分所有者のみの共有に属することになる。

 上記東京地判平成10年5月14日では、5階以上にある専有部分のために設置されたエレベーターが一部共用部分が全体共用部分かが争われ、裁判所は、全体共用部分にあたる、と判示した。一部共用部分であれば、規約に別段の定めがない限り、5階以上の専有部分の区分所有者だけでその持分に応じて管理維持費用を負担すべきことになる(区分所有法19条、11条)が、全体共用部分であればその建物の区分所有者全員がその持分に応じてこれを負担する(区分所有法19条)。

  一部共用部分を共用すべき区分所有者(区分所有法3条後段)は、一部共用部分を共有するとはいっても、これを管理する権限を全面的に有するわけではない。第一に、一部共有部分の管理に関する事項の内で「区分所有者全員の利害に関係するもの」の管理は区分所有者全員で行う(同法16条)。たとえば、一部共用部分の外装が建物全体の美観に影響を及ぼす場合には、何時、如何に外装の改修を行うかは、規約による別段の定めがない限り、区分所有者全員の多数決により決定しなければならない(同法18条1項本文、2項)(上掲、「新しいマンション法」、95頁参照)。第二に、「一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないもの」であっても、区分所有者全員の規約により全員で行うものと定めた事項の管理も区分所有者全員で行う(同法16条、31条2項、30条2項)。一部共用部分に関するそれ以外の管理については、一部共用部分の区分所有者が行うことができる(同法16条)。たとえば、下駄ばきマンションの店舗部分のみの用途に供される一部共用部分の管理は、上記第一、第二に該当しない場合には、店舗部分の区分所有者が管理することになる。
 その結果、たとえば、一部共用部分について耐震補強工事を施す場合には、その工事を何時、如何に行うべきかは区分所有者全員により決定されるにも拘わらず、その費用はーーマンション全体の利益のために行われる工事にも拘わらずーーその工事の対象となる一部共用部分の共有者(区分所有者)が負担するということが生じうる。このような結論が妥当ではないことは明らかであるから、このような場合には、たとえ、一部共用部分に対して施される「変更」であっても、その費用はマンション全体の共用部分の管理に要する費用として、全区分所有者が負担すべきであろう(詳しくは、Q&ANO57参照)。

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