大規模修繕を行う場合の決議は過半数決議?

大規模修繕を行うために必要な手続は、その大規模修繕が共用部分の著しい変更を伴う場合とそれ以外の場合とで違います。なぜなら、前者では区分所有法17条が適用されるのに対し、後者では同法18条が適用されるからです。以下では、それぞれの場合について、どのような手続きが必要かを説明します。

1.区分所有法17条の適用

(1)「重大変更」

共用部分の変更の内で、区分所有法17条に従って変更を行う必要があるものは「重大変更」と呼ばれています(法務省民事局参事官室編、「新しいマンション法」、商事法務研究会、1983、81頁参照)。平成14年改正の区分所有法は、共用部分の変更のうち、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除いた変更について17条が適用される、と規定しています(区分所有法17条1項)。これは、分かりにくい表現ですが、「[共用部分の]形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」とは、「[共用部分の]形状の著しい変更を伴わないもの、または、[共用部分の]効用の著しい変更を伴わないもの」と解することもでき、そのように解釈すると、形状の変更、または効用の変更の何れかが著しくなければ、17条の適用から除かれることになります。しかし、立法担当者は、[共用部分の]形状又は効用の著しい変更を伴う場合には、17条が適用されると述べています(吉田徹編著、「一問一答改正マンション法ーー平成14年区分所有法改正の解説」、商事法務、2003、21頁など)。この解釈によると、17条の適用から除かれるのは、形状及び効用の何れにおいても著しい変更がない場合の限られることとなります。

共用部分の重大変更をする場合には、管理組合は次のような手続を踏まなければなりません。

(2)区分所有者及び議決権の各3/4以上の賛成

共用部分の「重大変更」をする場合には、管理組合集会を開き、そこで、理事会の提案を、区分所有者及び議決権の各3/4以上で議決することが必要です。このように、区分所有者及び議決権の過半数では足りず、3/4とか4/5を必要とする決議を「特別決議」といいます。

決議を行うにあたっては、区分所有法に則り集会の招集手続を進め、その集会で決議をすることが必要です。また、区分所有者数の数え方や議決権割合の決め方についても注意が必要です。

したがって、大規模修繕についても、これが「重大変更」に該当する場合には、管理組合集会で特別決議をしなければなりません。

(3)3/4の区分所有者の賛成の緩和

(2)で述べた区分所有者数の3/4以上という要件は、管理規約で過半数まで減ずることができます。しかし、議決権の割合を管理規約で緩和することはできません。

(4)特別の影響を受ける区分所有者の承認

共用部分の重大変更が専有部分の使用に特別な影響を及ぼすべきときには、3/4以上の多数決に加えて、その専有部分の区分所有者の承諾を得ることが必要です。専有部分への特別の影響の例としては、「その変更工事中、ある専有部分への出入りが不自由になるとか、変更の結果、ある専有部分の採光・通風が悪くなるといった場合」が挙げられています(前掲「新しいマンション法」、85頁)。

2.区分所有法18条の適用

(1)軽微変更

共用部分の変更の内で、区分所有法18条に従って変更を行なえばよいものは「軽微変更」と呼ばれています(前掲「新しいマンション法」、83頁参照)。平成14年改正の区分所有法では、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わない変更が「軽微変更」です。共用部分の軽微変更は、区分所有法18条1項本文の「共用部分の管理」に該当すると解されています(前掲「新しいマンション法」、8頁)。

共用部分の軽微変更をする場合には、管理組合は次のような手続を踏まなければなりません。

(2)区分所有者及び議決権の各過半数以上の賛成

管理組合集会での議決が必要なこと、集会招集手続に瑕疵がないように注意する必要があること、区分所有者数の数え方、議決権割合の決め方などは、重要変更の場合と同じです。違う点は、区分所有者及び議決権の各過半数以上の賛成で良いことです。

(3)規約による別段の定め

区分所有法18条2項は、「前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない」と規定しています。したがって、例えば、特定の種類の軽微変更については、いちいち集会で議決しないで、管理者や理事会等の決定に委ねる旨規約で定めることができます(稲本洋之助、鎌野邦樹、「コンメンタールマンション法 第2版」、青林書院、2004、147頁参照)。

マンション標準管理規約(単棟型)22条2項は、各住戸に付属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部(これらも共用部分です)の改良工事で、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上に資するものについて、管理組合が工事を速やかに実施できないときは、各区分所有者が、その責任と負担で実施できる旨定めていますが、これは、18条1項の定めとは異なる手続を管理規約で定めている例です。管理規約でこのように定めておけば、例えば、ある住戸の窓ガラスを複層ガラスに代えるのに管理組合集会での区分所有者及び議決権の各過半数による決議は必要ではないことになります。

(4)特別の影響を受ける区分所有者の承認

この点は1の(4)で述べたことと同じです。

3.共用部分のどのような変更が、「重大変更」になるのか?

(1)平成14年区分所有法改正

区分所有法17条1項は、平成14年に改正されるまでは、共用部分の変更について以下のように規定していました。

共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で決する

したがって、旧区分所有法17条1項の下では、「著しく多額の費用を要しない」共用部分の改良工事が「軽微変更」で、それ以外は「重大変更」でした。平成14年改正で、「形状又は効用の著しい変更」を伴う共用部分の変更だけが「重大変更」となったのです。

「建物の維持・保全の観点から定期的に実施することが予定されている外壁や屋上防水等のいわゆる大規模修繕工事についても、著しく多額の費用を要する場合には、特別多数決議が必要になって、その円滑な実施が困難になっており、建物の適正な管理に支障を来す場合がある」ことが、この改正の理由であると言われています(吉田徹編著 「一問一答 改正マンション法」、2003、商事法務、21頁)。

(2)管理組合規約

平成16年に改正される前の「中高層共同住宅標準管理規約」45条3項は、旧区分所有法17条1項の規定を受けて、「敷地及び共用部分等の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)」については、「組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上」による総会の議決が必要である旨規定していました。改正マンション管理標準規約47条3項2号は、もちろん、改正区分所有法17条1項本文に合わせて、この点を改正しています。

ところで、管理組合の中には、旧中高層共同住宅標準管理規約に基づいて管理規約を制定している組合が相当数ある、と言われています。そのような管理規約が、マンション管理標準規約の改正後、これにあわせて改正されていない場合には、管理規約上は、共用部分の変更は、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないもの」以外はすべて「重大変更」となり、3/4以上の多数による決議を必要とすることになります。これでは、折角区分所有法17条1項を改正しても、大規模修繕をし易くするというその趣旨が充分には実現されません。

それゆえ、改正区分所有法に基づき大規模修繕を実施する、というのが区分所有者の通常の意思であることを理由として、

前記標準管理規約のような規定がある場合(大規模修繕の決議要件を3/4以上の特別多数決と定める場合も同様と考えられます)でも、一般的には、改正法施行後は、普通決議で大規模修繕を実施できるものと考えられます。

と言われています(前掲「一問一答 改正マンション法」、23頁)。

すなわち、管理規約の文言が「敷地及び共用部分等の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)」となっていても、「敷地及び共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)」と読んで良いというわけです。

(3)どのような場合が「形状又は効用の著しい変更」となるか

それでは、共用部分の「形状又は効用の著しい変更」(重大変更)に該当するものとして、特別決議によらなければならないのは、どのような場合でしょうか?

「共用部分の形状の著しい変更」の例としては、階段室を変更してエレベーター室にする場合が、また「共用部分の効用の著しい変更」の例としては、集会室を改造して賃貸店舗に転用する場合が挙げられています(前掲「一問一答 改正マンション法」、24頁)。

また、平成16年改正の「マンション標準管理規約47条」に対する国土交通省のコメントでは、特別決議を必要とする修繕、普通決議で良い修繕について、次のような例を挙げています。

  • バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通工事とし、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けをしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。
  • 耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補強する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。
  • 防犯化工事 略
  • IT化工事 略
  • 計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更正・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。
  • その他 略

(1)で述べたように、区分所有法17条1項本文改正の趣旨は、定期的に行う大規模修繕工事の円滑な実施を図ることにありました。このような改正趣旨からみると、国土交通省のコメントの5.が述べているように、計画修繕工事は重大変更にはあたらず、管理組合の普通決議により行うことができると考えられます。

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